【ニューデリー時事】パキスタンが米国とイランの停戦実現に向け奔走している。双方との良好な関係や、間に入ることが多い湾岸諸国がイランから攻撃を受け当事国となったこともあり仲介役に浮上。パキスタンでは和平に寄与できれば国際的地位の向上につながると期待する声も上がる。
「この戦争は誰の利益にもならず、死や破壊をもたらすだけとの認識で一致した」。ダール副首相兼外相は3月29日、サウジアラビアやトルコ、エジプトの各外相を首都イスラマバードに招き協議を主催。合意点を説明した上で、米イランの当局者による停戦協議の自国開催に重ねて意欲を示した。
ダール氏は同31日には中国を訪問し、王毅共産党政治局員兼外相と会談。イラン情勢に関し敵対行為の即時停止やホルムズ海峡の航行の安全を求める5項目の提案を発表した。パキスタン外務省によれば、王氏はパキスタンの「建設的かつ一貫性のある外交努力」を評価。経済や安全保障の後ろ盾となっている中国のお墨付きも得た形だ。
パキスタンはイランと約900キロに渡る国境を接し、テロ対策や貿易面の協力拡大を進めてきた。パキスタンはイランに次ぎ世界で2番目に多いイスラム教シーア派人口を抱える。
また、第2次トランプ政権下の米国と急接近。シャリフ首相や軍トップのムニール参謀長が昨年訪米し、トランプ大統領をノーベル平和賞候補に推薦するなどして首脳間の信頼を築いた。
パキスタンは1972年のニクソン米大統領の電撃訪中や、2021年の米軍のアフガニスタン撤収につながる局面で仲介役を演じてきた歴史もある。パキスタンのハリド元駐中国大使は、これらは紛争で中立的立場を貫いてきたからこそ果たせた役割だと強調し、現在の働きは「全ての当事者から『信頼に足る仲介者』としての存在感を高めるだろう」と話す。
一方、パキスタンと敵対するインドは自らの得意とする全方位外交のお株を奪うような動きにいら立ちや懐疑的反応を示している。インドの元駐イラン大使は地元メディアの取材に、ムニール氏とトランプ氏がホワイトハウスで昼食を共にしていた昨年6月は、イスラエルによるイラン攻撃のさなかだったと指摘。「イランはパキスタンが誠実なブローカーではないことははっきりと認識している」と語った。
〔写真説明〕サウジアラビアやトルコ、エジプトの各外相と並んで歩くパキスタンのダール副首相兼外相(中央右)=3月29日、イスラマバード(パキスタン外務省のXより・時事)
〔写真説明〕中国の王毅共産党政治局員兼外相(右)と会談するパキスタンのダール副首相兼外相=3月31日、北京(パキスタン外務省のXより・時事)