非加熱血液製剤の投与でエイズウイルス(HIV)に感染した血友病患者らが国などを訴えた集団訴訟で和解が成立し、29日で30年。近年の新型コロナ禍も踏まえ、東京原告団代表の後藤智己さん(53)は「感染症への偏見や差別など課題は解決していない」と警鐘を鳴らす。
後藤さんは、幼少期に出血が止まりにくい血友病と診断され、治療に用いられた非加熱血液製剤が原因で中学生ごろHIVに感染していることが分かった。重複感染したC型肝炎が悪化し、肝硬変に苦しんだ。
非加熱血液製剤による被害は約1400人に上り、「史上最悪の薬害」とも称された。1989年、患者や遺族らが原告となり、国と製薬会社を相手に東京、大阪両地裁に提訴。後藤さんも95年、原告に加わった。
96年3月に両地裁で和解が成立。国と製薬会社が一時金4500万円を支払う内容で、健康管理費用なども盛り込まれた。後藤さんは2011年に3代目の原告団代表となり、厚生労働省との協議などを担っている。
原告団によると、被害者の多くは現在50代。若い頃、闘病で就職が難しかった上、就職氷河期と重なり、社会との関わりが少ない人も多いという。後藤さんは、被害者の年齢層が上がり、生活や通院への支援が課題に上ってきたとし、「今後どのような支援体制が必要なのか、考えるべき時期が来ている」と訴える。
感染症への差別は根深いとも痛感している。新型コロナの流行初期、都道府県を越えて移動した人がバッシングされるなどした状況を目の当たりにし、「差別や偏見は、決してなくなっていないと再確認した」と語る。「コロナもHIVも、誰でも感染する可能性がある。正しい知識を持ってほしい」と強調した。
〔写真説明〕取材に応じる薬害エイズ東京原告団代表の後藤智己さん=17日、東京都新宿区