「普通免許で運転できるトラック」なら仕事ラクですよね? 大型はキツそう…? ドライバーの仕事の実態とは 「すぐ転職することになりかねない」と専門家

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トラックドライバーになるハードルを下げる「普通免許で運転できるトラック」が売れています。ただ、トラックの運転免許には種類があり、それぞれできることも変わってきます。もしトラックドライバーに就職を考える場合、気を付けるべき点は何でしょうか。

トラックの運転免許「じつは4つあります」

 いすゞ自動車が2024年より販売している小型トラック、エルフミオ。普通免許で運転できるトラックで、当初いすゞが設定していた年間平均販売台数をオーバーするほどの販売台数を誇っています。

 ただ、「普通免許ならば自分も持っているからすぐトラックドライバーになれる」と、勇み足でその道を志すとミスマッチになる可能性もあるといいます。元トラックドライバー・交通心理士で近畿大学・理工学部の島崎 敢准教授に、トラックの車格・職種の解説と合わせて、「普通免許で運転できるトラック」に支持が高まる推測を聞きました。

 まず、島崎准教授はトラックに関する4種類の運転免許の種類について整理しました。

・普通免許……車両総重量=3.5トン未満、最大積載量=2トン未満
・準中型免許……車両総重量=7.5トン未満、最大積載量=4.5トン未満
・中型免許……車両総重量=11トン未満、最大積載量=6.5トン未満
・大型免許……車両総重量=11トン以上、最大積載量=6.5トン以上

「トラックドライバーを志す際の出発点は、この4つから免許を選ぶことになりますが、最も手軽なのは普通免許です。現状のトラックドライバーは慢性的な人手不足に陥っているので、エルフミオなどの普通免許で運転できるトラックを導入することで、より多く人手を確保しようとしているように感じます」(島崎准教授)

 ただし、トラックドライバーになる場合、前述の免許種別およびトラックの車格だけでなく、「職種」「働き方」も実は様々あるとか。中身をよく理解してからその職を選ぶようにしないと、結果的にすぐ転職することにもなりかねないと、島崎准教授は言います。

「まず、トラックドライバーと言うと『長距離を輸送する人』をイメージする人は多いかもしれませんが、必ずしもそうではありません。一般的にはトラックの車格が大きいほど長距離輸送となり、車格が小さいほど地域内の配送が多くなる傾向はありますが、それも言い切れないところがあります。

 たとえば、油・コンクリート・土砂などの資材系の運搬トラックは一般的に車格が大きいですが、その地域の中で製造・使用が完結するため、基本的に長距離を運ぶ必要がありません。逆に、国内で限られた場所でしか作っていない製品や輸入品などは、都市間をまたぐ大型輸送が中心になります。

 このように『車の大きさ=距離の長さ』とは限らないことがあり、さらに業種や荷物の性質によって働き方がまったく変わります」(島崎准教授)

労働時間厳守などで「働きやすく転職しやすい」メリットも

 気になるその「働き方」についても、島崎准教授によれば「車格だけで判断できるものではない」といいます。

「トラックドライバーの体力に大きく影響するのは主に『積み下ろし作業』になるかと思います。この『積み下ろし作業』も、荷物の種類によって大きく違います。宅配便などの小口荷物では手積み・手おろしが中心で、特に各家庭や店舗への配達は体力を使う仕事です。

 一方で、フォークリフトやロールボックスパレット(車輪付きのカゴ台車)を使えば、荷扱いが比較的スムーズにできます。重量物はクレーンや重機で積み下ろしを行うことも多く、タンクローリーのような液体輸送では、ポンプやホースで自動的に積み下ろしする仕組みが整っています。
コンテナ輸送ではドライバーが中身に触れず、運搬だけを担当するケースもあります。

 このように、『積み下ろし』の大変さはトラックの車格に限らず、『扱う荷物の性質』によって変わってきます」(島崎准教授)

 ここまでの島崎准教授の解説を受けると、仮に「普通免許で乗れるエルフミオみたいなトラックがあるんだから、俺もトラックドライバー職に就く!」と考えても、「扱う荷物」が強く影響する労働の過酷さなども事前に把握しておかないと、「これはキツい」となりかねない、ということになります。

 ただし、島崎准教授は「それでもトラック輸送業界全体では、総じて昔よりはずっと働きやすくなっている」と言います。

「トラックの車格を問わず、労働時間の上限規制が強化された影響で、昔のように『走り続けて稼ぐ』スタイルは減り、その分働きやすい環境が整ってきています。各種免許の取得には、費用がかかりますが、最近では会社負担で免許を取らせてくれるところも多くあります。

 さらに、ドライバー業界では転職や職種の変更が比較的珍しくなく『別の荷物を運んでいる会社』に移る人、あるいはバス・タクシーなど『人を運ぶ仕事』に転身する人や、たとえば介護や子育てをすることになった場合など、自分の生活の変化に合わせて長距離から近距離に移る人もいます。こういった点で見ると『働きやすい』『ツブシもききやすい』職種だと思います」(島崎准教授)

「下から始めて上を目指す」のもアリ

 トラックドライバーを志す場合、エルフミオなどの普通免許で運転できる車格のドライバーから始めて、「自分に向いている」と思えば、さらに車格を変えたり、「扱う荷物」が違う会社に転職するのも良さそうです。

「普通・準中型・中型・大型をすべて扱う運送会社では、小さい車格のトラックから経験を積ませてもらい、段階的にステップアップできる仕組みを設けているところもあります。たとえば『将来的には、大型トラックに乗りたい』と考えている人でも、まずは普通自動車で運転できるトラックから始めてみるのは良いかもしれませんね」(島崎准教授)

 最後に、トラックドライバー志願者について、島崎准教授はこう助言をくれました。

「トラックドライバーの魅力は、大部分の時間が一人で運転する仕事であること。社内の人間関係に気を取られることが少なく、運転が好きな人にはこれ以上ない仕事です。逆にコミュニケーションが好きな人は、寂しくなることがあるかもしれませんが……。
もちろん、安全への責任は重いですが、『人間関係が楽』『生活に合った働き方を選べる』という自由さは、この仕事ならではの魅力だと思います」

 結局のところ、トラックドライバーを志した場合「どの車格のトラックに乗るか」ではなく、自分の体力・生活リズム・興味に合わせて、どんな荷物をどんな形で運ぶかを考えることが大切だということです。

「トラック業界はドライバー不足であり、その分、志願者の選択肢が広がっていると言って良いと思います。まずは一歩踏み出して、実際に経験してみることが、長く続けられる働き方を見つける近道だと思いますよ」(島崎准教授)

なお、島崎准教授は運転⼼理と安全リスクなどについて解説するポッドキャスト番組『プロフェッショナルドライブ』を配信しています。元トラックドライバーで交通⼼理⼠、さらに現役の⼤学准教授というマルチな⽴場から、運転にまつわる多彩なトピックを展開しています。