イランの“刺客”撃墜で輸出に追い風か 「韓流兵器」が売れに売れる理由 コスパ&実戦証明 それより大切なコトとは?

「防衛装備移転三原則」とは?

韓国製地対空ミサイルがUAEで“性能”を証明。好調な韓国製防衛装備品の輸出がさらに加速するかもしれません。

UAEで「コンバットプルーブン」得た韓国製ミサイル

 UAE(アラブ首長国)国防省は2026年3月3日、同国軍の韓国製中距離地対空ミサイル「M-SAM II(天弓II)」が、イランから発射された弾道ミサイルと巡航ミサイルの迎撃に成功したと発表しました。

 M-SAM IIは韓国の防衛開発庁(DAPA)が開発したもので、UAEは2022年にM-SAM II 10セットの購入契約を、メーカーであるLIG Nex1(リグネクス1)、ハンファシステム、ハンファエアロスペースと締結しています。韓国メディア「Korea.net」によれば、2026年3月の時点で2セットの引き渡しが完了し、UAE軍で実戦配備についているようです。

 UAE軍の防空システムはM-SAM IIとアメリカ製の「パトリオット」、イスラエル製の「アロー」で構成されています。UAE国防省はイランから飛来した弾道ミサイル186発のうち172発、巡航ミサイル8発をすべて撃墜しており、迎撃成功率92%に達したと発表しています。前に述べたようにM-SAM IIは2セットしか配備されていませんので、すべてのミサイルをM-SAM IIが撃墜したわけではないのかもしれません。

 ただ、3月11日付の「KOEAE WAVE」など複数の韓国メディアは、韓国空軍の大邱(テグ)基地にUAE空軍のC-17輸送機が着陸し、M-SAM IIと見られる軍需物資を搭載して飛び去った目撃情報を報じています。また、UAE大統領の非公式顧問とされるアブドゥルハレク・アブドラ氏はSNSで「イランの攻撃に対抗するため、30発の迎撃ミサイルを迅速に提供してくれた韓国に感謝する」と述べています。

 これらからすると、UAEがM-SAM IIの性能に満足していることは確かなのではないかと思います。

実戦での実績が輸出を後押し

 防衛装備品の輸出にあたっては、実戦で有用性が実証された、いわゆる「コンバットプルーブン」がモノを言うとの見方が根強くあります。韓国は今回、自国製地対空ミサイルにとって撃墜実績を得ることとなりました。

 韓国製防衛装備品の輸出は好調で、最も輸出に成功していると言っても過言ではないK9自走砲は、韓国海兵隊が北朝鮮(朝鮮人民民主主義共和国)との小競り合いで使用されているため「コンバットプルーブン」があります。しかし、M-SAM IIをはじめとする防空防衛装備品はこれまで実戦で使用されたことがなく、コンバットプルーブンの不足もあってか、それほどセールスが好調なわけではありませんでした。

 このためM-SAM IIは2026年3月現在、UAE、サウジアラビア、イラクの3か国にしか採用されていません。しかし、今回M-SAM IIがコンバットプルーブンを得たことで、防空防衛装備品の輸出も加速していく可能性があります。

韓国の兵器が売れるのは「安いからでしょ?」

 韓国メディアの内外タイムスは前に述べたパトリオットのミサイル1発の価格が6億円程度であるのに対し、M-SAM IIは3分の1程度だと報じています。この報道が事実であれば、「価格の安さ」が韓国製防衛装備品の好調な輸出の原因の一つということができるかもしれません。日本ではとりわけ、韓国の防衛装備品に輸出が好調な理由を価格の安さだけに求める傾向があるように筆者(竹内 修;軍事ジャーナリスト)には見受けられます。

 しかし、現在の韓国の労働者賃金は決して低くはなく、安い労働力を背景とする安価さを武器にすることは困難だと思います。その状況下で欧米などのメーカーに比べて安価で、かつ高性能な製品を供給することは簡単なことではありませんが、それを実現できているところが、韓国製防衛装備品のセールスが好調な理由の一つでしょう。

 さらに理由を挙げれば、「納期の確実さ」と「柔軟な対応」にもあると筆者は思います。

え、そんなに売れてるの!?

 昨今の輸出市場では、とりわけアメリカ製防衛装備品の「納期の不確実性」が高まっています。たとえばスイスは2021年6月に次期防空システムとしてパトリオットを選定していますが、アメリカ政府がウクライナ向けの生産を優先したことなどから、納入が大幅に遅延しており、引き渡しがいつ行われるのかも明確になっていません。

 このためスイス政府はヨーロッパ製防空システムの導入も検討しているようですが、ヨーロッパ企業もウクライナ向けと、ロシアの脅威の高まりを受けて防衛力を強化したいと考えるヨーロッパ諸国の需要を充たすのに精一杯な状態です。

 ポーランドはウクライナ開戦後に韓国へK2戦車やFA-50戦闘機などを大量発注しています。ヨーロッパ諸国の中でも最もロシアの脅威を強く感じているポーランドは、早期の引き渡しを望んでいました。このため韓国政府と韓国企業は、韓国軍向けに製造したK2戦車や、韓国軍仕様のFA-50を引き渡して早期にポーランドの防衛力を強化しながら、ポーランド軍の要求に合わせたK9戦車やFA-50戦闘機などのポーランド国内での生産体制を構築するという手法を採用しています。

 スウェーデンのシンクタンクであるSIPRI(ストックホルム国際平和研究所)は2026年3月9日、NATO(北大西洋条約機構)加盟国が2025年にどこから防衛装備品を購入したのかをまとめたデータを発表しました。これによると、韓国はアメリカに次ぐ2位の座に躍り出ています。

 この結果には、NATO加盟国の過度なアメリカへの依存を避けたいという思惑もあるのでしょうが、これまで述べてきた韓国政府と韓国企業の努力や対応によるところも大きいのではないかと思います。