【イスタンブール時事】イスラエル軍がイランで外交や国防を統括する最高安全保障委員会のラリジャニ事務局長を殺害したことを受け、イランは一段と反米・反イスラエル強硬路線に傾くとみられる。徹底抗戦を掲げる精鋭軍事組織「革命防衛隊」に近い人物が後任に就く可能性が高く、戦闘終結の道筋はさらに不透明感を増している。
ラリジャニ氏は革命防衛隊の幹部や閣僚、国会議長などを歴任。米イスラエルの軍事作戦で死亡した前最高指導者アリ・ハメネイ師を側近として支えた。米メディアによれば、同師は晩年、万一の事態に備え、イスラム体制護持のための計画立案などをラリジャニ氏に委ねていたとされる。
イスラエル軍は17日の声明で、ラリジャニ氏がハメネイ師亡き後、「事実上の指導者」としてイスラエルや周辺諸国への攻撃を率いていたと主張した。新最高指導者モジタバ・ハメネイ師が公の場に姿を見せず、指導力と求心力が未知数の中で、イランにとって実績のある実力者の殺害は一定の打撃になるとの見方は強い。
ただ、イランでは指揮命令系統の混乱を避けるため、政権幹部や軍・治安組織の司令官らについては複数の後継者があらかじめ決まっているとされる。数次の米イスラエルの攻撃で多数の要人が殺害されたものの、体制が揺るがず、報復を継続できるのはそのためだ。
ラリジャニ氏は今年1月の全国的な反体制デモの徹底弾圧を主導したとみられ、SNSで激しい米イスラエル非難を続けていた。一方で、かつては核問題を巡る外交交渉を担当し、国際協調を訴える穏健派とのつながりもあったとされる。シンクタンク「国際危機グループ」のイラン専門家アリ・バエズ氏は米メディアに「戦場と政治を結び付けられる数少ない人物を失った。体制が視野を狭め、一層強硬で危険になる恐れがある」と指摘している。
〔写真説明〕イラン最高安全保障委員会のラリジャニ事務局長=2025年8月、ベイルート(EPA時事)