【ワシントン、北京時事】トランプ米大統領が16日、今月下旬に予定していた中国訪問を延期する考えを表明した。米イスラエルによるイラン攻撃は収束の見通しがないほか、米中関係の摩擦要因にもなっている。トランプ氏の「誤算」が浮き彫りになった形だ。
「ここにいることが重要だ」。2期目初の訪中を半月後に控えていたトランプ氏は、ホワイトハウスで戦時対応を理由に米国にとどまる考えを示した。中国の習近平国家主席との良好な関係をアピールし、2017年以来となる訪中に意欲を示してきたが、方針を急転換した。
これに先立つ15日、トランプ氏は突如、訪中延期をちらつかせ、ホルムズ海峡での船舶の安全確保を要求した。米中はこの時、パリで閣僚級貿易協議を開き、首脳会談への調整を進めていた。協議に臨んでいたベセント財務長官は、「対話継続」の雰囲気醸成に努めるのが精いっぱいだった。
米中は首脳会談の成功に向けて、「(相手国を刺激しないよう)抑制的に対応している」(日中関係筋)とみられていた。トランプ政権は11月に中間選挙を控え、ベセント氏らは経済的安定性を重視し、政権内で対中融和を唱え続けてきた。中国側も習氏の4期目入りを見据えて対立回避を最優先としているためだ。
しかしイラン攻撃によって原油価格高騰など混乱が長期化する中、「安定」を追求していた米中の思惑にずれが出てきた。中国はイラン攻撃について「国際法違反」とする立場を取る。さらに米国が招いたホルムズ海峡の事実上の封鎖でイラン産原油が入手しにくい事態に陥った。
一方、トランプ政権は新たな交渉材料としての関税導入に向け、通商法301条に基づく調査の対象に中国を含めて圧力を強化した。中国の李成鋼国際貿易交渉代表は、「厳正な申し入れを行い、協議中に深い懸念を示した」と強い反発を表明した。
米ブルームバーグ通信によると、中国側は以前からトランプ氏の訪問時期について準備期間を確保するため4月末を提案していたとされる。訪問延期は中国にとって時間稼ぎになり得る。元米高官は、イラン情勢が混迷するほど米中を巡る環境は悪化し「訪中の実現は一層困難になるだろう」との見方を示した。
〔写真説明〕トランプ米大統領=16日、ワシントン(EPA時事)
〔写真説明〕中国の習近平国家主席=9日、北京(AFP時事)