ホンダがアメリカで生産している「インテグラ」を日本市場へ導入します。かつて日本で人気を博しながらも姿を消したインテグラは、なぜアメリカで復活し、そして成功を収めることができたのでしょうか。
「インテグラ」がアメリカで復活できたワケ
ホンダが2026(令和8)年後半より、アメリカで生産している「アキュラ インテグラ」を日本市場へ導入すると発表しました。
インテグラは同社の「シビック」の兄貴分に当たるスポーティな中型ハッチバック車(一時期は4ドアセダンも存在)で、1980年代から1990年代にかけて人気を集めました。特に3代目・4代目に設定されていた「タイプR」は、当時のFFスポーツとしては国内最速クラスの1台でした。
しかし、2000年代半ば以降はエコカーやミニバン・SUVに人気が移っていき、インテグラだけでなく、各社がスポーティな中型ハッチバック車の販売で苦戦を強いられました。ホンダは2007(平成19)年に、インテグラを国内ラインナップから廃止。さらに弟分のシビックでさえ、2010年代には一時的に廃版となりました。
一方アメリカではインテグラを「アキュラ」というブランドで販売し、一足早く2006年夏に廃版(最終世代は「RSX」の名称で販売)となりました。しかし、シビックについては販売を継続。当時のシビックには日本未発売だった2ドアクーペもあり、従来のインテグラの支持層をカバーしました。
そもそも、アメリカは日本ほど流行の変化サイクルが速くありません。全米の販売台数ランキングは長年ピックアップトラックが上位に入っており、SUV人気も根強い一方、セダンやハッチバック車も手堅く売れています。シビックは日本で絶版だった時期を含め、アメリカでは常にベストセラーを争っています。
そんなアメリカ市場では、2021年にシビックの2ドアクーペが販売終了となりましたが、翌2022年、なんと代わって新型アキュラ「インテグラ」がデビュー。復活したインテグラは登場するやいなや、北米カー・オブ・ザ・イヤーを筆頭に数多くの賞を獲得したのです。
アメリカでインテグラを支持した「意外な人々」
新生インテグラは、現地のさまざまなメディアから絶賛されています。またアキュラは、「プレミアムスポーツコンパクトセグメントで瞬く間にベストセラーとなり、このクラスで35歳未満の購入者の割合が最も高くなっています」と説明しています。
若者人気の高さも驚きですが、ここで注目したいのはインテグラがアメリカで「プレミアムスポーツコンパクト」とされていることです。実はインテグラを販売している「アキュラ」は、トヨタで言えば「レクサス」のような位置づけの上級ブランドです。実際アメリカでは、「BMW 2シリーズ」や「アウディS3」といった欧州のプレミアムモデルと比較されているのです。
その一方、アキュラはレクサスなどとはブランドの方向性がやや異なります。アキュラの展開がアメリカで始まったのは1986年で、初期に導入されたのは高級車「レジェンド」のクーペ、そしてインテグラのクーペでした。
さらに、後年には本格スポーツカーの「NSX」がフラッグシップ・モデルとして登場しています。キャッチコピーは「Precision Crafted Performance(精密に作られたパフォーマンス)」。つまり豪華さだけではなく、性能の高さや走りの楽しさもアキュラの重要な“売り”なのです。
こうしてアキュラはプレミアムクラスのスポーティなブランドとして、現在までアメリカのクルマ好きから支持されています。残念ながらNSXは2022年に第2世代の生産が終了してしまいましたが、代わってトップモデルとなったのが新型インテグラです。復活はアキュラファン待望のニュースであり、それが数多くの賞の獲得にもつながったのでしょう。また、プレミアムクラスでは少数派となったMT仕様を用意しているのも、モデルの性格がよく表れているポイントです。
ちなみに日本に導入されるのは、排気量2Lのターボエンジン搭載で最高出力320psの「タイプS」とのこと。近年は日本でもスポーツカー需要が復活傾向で、ホンダでも6速MT専用の「シビックRS」が20代を中心に支持されているといいます。日本でも若者人気を集めるかもしれない新型インテグラですが、筆者(鈴木ケンイチ:モータージャーナリスト)もハンドルを握るのが楽しみです。