政府が今国会に提出した「国家情報会議」設置法案は脆弱(ぜいじゃく)性が指摘される日本のインテリジェンス(情報活動)能力を強化するのが主眼だ。「戦後最も厳しく複雑」と分析する安全保障環境に対応する狙いがある。ただ、野党からは人権侵害につながりかねないなどの声が早くも出ており、審議は難航しそうだ。
「監視強化などの指摘は当たらない。懸念を招かないよう丁寧に説明を行っていく」。木原稔官房長官は13日の記者会見でこう語った。
法案は自民党と日本維新の会の連立合意がうたう「インテリジェンス改革」の一環だ。現行の内閣情報会議(議長・官房長官)を発展的に解消し、司令塔機能を強化した「国家情報会議」(同・首相)を新設。内閣情報調査室は「国家情報局」、内閣情報官は「国家情報局長」に格上げする。
日本政府内では内調、外務省、防衛省、警察庁、公安調査庁などに情報機能が分散し、収集した情報が有効に活用されてこなかったとの反省がある。このため、各省庁には国家情報会議に資料・情報を提供する義務を課し、国家情報局に総合調整機能を与える規定も盛り込んだ。
もっとも、法案には早くも懸念の声が上がる。法案によると、国家情報局長は国家安全保障局長と同格の位置付け。情報が軽視されないようにするのが狙いだが、偏った情報により政策がゆがめられるのではないかとの指摘が出ている。
中道改革連合の伊佐進一氏は先月27日の衆院予算委員会で、2003年に当時のブッシュ米政権が米中央情報局(CIA)の誤った情報に基づいてイラク戦争に踏み切ったと指摘。「同格だから暴走を止められなかった。情報機関の意図が政策を左右する危険がある」と訴えた。
法案は改革の足掛かりにすぎない。成立すれば、政府は7月にも国家情報会議を発足させ、対外情報庁の新設、情報要員養成機関の創設、スパイ防止関連法制の整備を2027年度末ごろまでに一気に進める構えだ。いずれも「国論を二分するような大胆な政策」(高市早苗首相)の一環だ。
自民は中曽根政権時代の1985年にスパイ防止法案を国会に提出し、強い反対論を受けて成立を断念した経緯がある。中道の小川淳也代表は一連の具体策について「国民の相互監視など人権侵害の危険性が強く危惧される」として、法案審議には「極めて慎重な立場」で臨むとしている。
〔写真説明〕記者会見する木原稔官房長官=13日、首相官邸