15年前の福島第1原発事故では、水素爆発を起こした原子炉建屋内にある使用済み核燃料の冷却に、長いアームを持つコンクリートポンプ車が活躍した。50メートル超あるアームを生き物のように動かして水を掛ける様子から「キリン」「ゾウ」などと呼ばれた車両。緊急時に備えて現在も一部は整備が続けられているが、廃炉作業の進展により実質的な役割を終えつつある。
大津波に襲われて電源喪失した1~4号機では、原子炉に加えて使用済み燃料プールの冷却もできなくなり、水中で保管されていた燃料が露出して大量の放射性物質が放出される恐れがあった。自衛隊ヘリコプターや消防車による散水・放水も行われたが、長期間、安定的に注水する対策が急がれていた。
そこで協力を申し出たのが、ビルなど高所の建設現場に生コンクリートを送り込む高圧ポンプ車を保有する国内外の建設会社などだった。東京電力は計6台の提供を受けて3月22日以降、現場に順次投入。水素爆発を起こした1、3、4号機のプールに直接注水することで危機を回避した。
作業は、建屋内の配管を使った注水への切り替えが完了する6月まで続いた。東電がまとめた事故調査報告書は「災害規模のさらなる拡大を防止した極めて重要な分岐点であった」としている。
現在、3台は故障などで廃車となり「いずれ解体されるのではないか」(東電担当者)とみられるが、残る3台は、注水設備の異常に備えて月に1度、点検を続けている。
ただ、3、4号機は使用済み燃料の取り出しが完了。1号機は今年1月、取り出し作業に向けて大型カバーが設置され、原子炉建屋が残る2号機とともに、外部からの注水は事実上難しくなった。
東電の担当者は「何らかの使い道を見つけ、緊急時の対応に厚みを持たせることも考えられる。活用方針は未定だが、今後議論していきたい」と話している。
〔写真説明〕東京電力福島第1原発事故の直後、4号機の使用済み燃料プールへの注水に使われたドイツ製のコンクリートポンプ車。「キリン」と呼ばれていたが、現在は廃車となっている=1月27日、福島県大熊町・双葉町
〔写真説明〕東京電力福島第1原発事故の直後、使用済み燃料プールへの注水に使われたドイツ製のコンクリートポンプ車。「ゾウ」と呼ばれ、現在も整備が続けられている(同社提供)
〔写真説明〕水素爆発を起こした福島第1原発4号機の使用済み燃料プールへ注水するコンクリートポンプ車=2011年3月22日(東京電力提供)