増える女性の海外赴任、「駐夫」は?=「先入観にとらわれないで」外交官夫妻―国際女性デー

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 女性の社会進出が広がる中、外交官や商社員など、海外駐在の機会が多い仕事に就く女性が増えている。これに伴い増加しているのが、妻の海外勤務に帯同する「駐在員夫(駐夫)」だ。現在、夫が帯同する形で日本に駐在する2組の外交官夫妻に、駐夫経験について聞いた。
 スウェーデン大使館の公使参事官を務めるヨハンナ・リンドクイストさん(49)は2023年に東京に着任した。ブラジル、米国に続き3カ国目。夫のダビット・グレンさん(49)は、帯同先で3人の子どもを育てながら、教師への転身を果たした。
 グレンさんはもともとスウェーデンで会社員だったが、11年にブラジルに転居する前、関心のあった教師になるための準備にかかった。「海外生活を始める上で、母国に戻った時に再開しやすい仕事を、と考えた」と振り返る。
 育児の傍ら勉強を続け、ブラジリアのインターナショナルスクールで臨時教師を務めたことも。その後、米国駐在を経て一家は20年にスウェーデンに帰国。グレンさんはすぐに仕事を見つけ、3年間教壇に立った。
 「海外生活が長くなるにつれ、再就労など帰国してからを不安に思うこともあった」。でも「家族が一緒にいることが一番だった」と断言する。「妻のキャリアは僕のではないが、一緒に築き上げた人生そのものとも言える」と強調し、「帯同は私が選んだことで、共に成し遂げたことを幸せに思っている」と笑顔を見せた。
 カナダ大使館のテレッサ・デハーン一等書記官(54)とインド出身の夫ビノイ・シャーマさん(65)は、これまでフィリピンやタンザニアなど5カ国に赴任。シャーマさんは、自宅でフリーランスのコンサルタントとして働きながら家事を担い、子ども2人を育ててきた。
 デハーンさんは、自分のきょうだいから夫婦間の収入格差に不満を漏らされたり、夫の親族から「彼を『主夫』にするなんてひどい」と言われたりしたことがあったという。一方で、保守的だと思っていたシャーマさんの祖母は、家庭内の役割分担は2人で決めることとし、「好きに生きなさい」と背中を押してくれた。インドは男尊女卑が根強いが、シャーマさんは「男性が一家の稼ぎ手であるべきだというステレオタイプは、少しずつ変わってきた」と指摘する。
 その上で、自身は「柔軟な働き方をしてきたし、何事にも先入観を持たないようにしてきた」と説明。これまでの経験から、夫妻は一人ひとりが自分の中にある思い込みや、社会規範にとらわれず、「主体的に生き方を選び取ることが大事」と呼び掛けた。
 【編集後記】身の回りで夫の海外赴任に帯同する女性や、海外駐在する女性が増え、「駐夫」に関心を持つようになった。「男性は仕事をして家計を支えるべきだ」という考えが根強く残る日本で、キャリアの中断を伴う帯同を男性が選択することは簡単ではないだろう。共働き世帯が増える中、柔軟な休業・復職制度の整備など、誰もが希望する形で働き続けられる社会になることを望みたい。(時事通信外信部記者・巽音)。 
〔写真説明〕在日スウェーデン大使館のヨハンナ・リンドクイスト公使参事官(左)と夫のダビット・グレンさん=2月20日、東京都港区
〔写真説明〕国際女性デー2026
〔写真説明〕取材に応じるダビット・グレンさん=2月20日、東京都港区
〔写真説明〕在日カナダ大使館のテレッサ・デハーン一等書記官(右から2人目)と夫のビノイ・シャーマさん(右)、その子どもたち=2014年、インド北東部シッキム州(デハーンさん提供)
〔写真説明〕取材に応じる在日カナダ大使館のテレッサ・デハーン一等書記官=2月27日、東京都港区