私の名前は高梨ひより。

ことのきっかけは、保育園でいつものように娘を送り届けたときでした。
クラスのママの一人、坂井さんに声をかけられたのです。
「結芽ちゃん、可愛い〜! こんなの、この辺には売ってないよね? もしかして、手作り?」
そのときは、軽い雑談のひとつだと思っていました。

数日後、坂井さんが真剣な顔で頼んできたのです。
「ねえ、前に言ってたヘアゴム、お願いしてもいい? ちょうどお遊戯会あるし、ちょっと華やかにしてあげたくてさ。市販のだとピンとこなくて」
「えっと……うん、いいよ。材料は?」

次の日、私は結芽のリュックから外れかかっていた巾着を付け直していました。
「あ、これも作ったの?やだ、めっちゃ可愛い!“ゆめかわ”ってやつじゃん〜!ユニコーン柄って、うちの子も絶対好きだわ〜!」その言葉に、嫌な予感が過ぎります。
「え、ほんと? ありがとう」

一瞬、浮かんだ考えに返事が遅れてしまいました。
「えっ……」
「ごめん、またお願いごとされちゃった〜!」
坂井さんが言いながら差し出したのは、見覚えのない布の束と、いくつかのリボンが入った紙袋です。
「この前の巾着見せたら、◯◯ちゃんママが『うちの子も欲しい〜!』って言ってて。で、布だけでも用意してくれたの。代わりに渡すね!」
それはつまり、「作ってあげてね」という意味でした。(なぜ……?)


軽い気持ちで引き受けた『お願い』が、少しずつ私の大切な時間を削り始めましたー!
「端切れがあるから」と材料を押し付け、こちらの技術や手間を当然のように求めるママ友の、無自覚な図々しさ。
善意の搾取から抜け出す術はあるのでしょうか――。