【サンパウロ時事】メキシコのシェインバウム大統領が、中南米に根付く男性優位思想「マチスモ」の壁に挑戦している。同国初の女性大統領として高い人気を背景に社会変革を先導。男女平等参画の実現に向けた同国の取り組みに世界の評価も高まりつつある。
「起きるべきではない。大統領ではなく一人の女性として主張したい」。シェインバウム氏は昨年11月、自身が路上で遭遇した痴漢行為を記者会見で非難した。首都メキシコ市で支援者と交流しているさなか、近づいてきた男に突然肩を抱かれ、首筋にキスをされそうになった。
女性が軽んじられる風潮が根強いメキシコでは、こうした行為を犯罪としない州もあった。しかし、社会福祉の拡充や巧みな外交手腕で就任から1年以上も約7割の支持率を維持するシェインバウム氏の影響力は強く、「鶴の一声」で32州全てで「性暴力」が同じ基準で処罰される見通しとなった。国は学校や職場などで主に男性向けの啓発活動を展開し、「文化の変革」を呼び掛けた。
政府調査によると、メキシコでは7割近くの女性が暴力を受けた経験がある。シェインバウム氏は就任後に女性相を創設。女性保護を明確にするため、昨年12月に刑事訴訟法など7件の法令改正にも署名した。女性団体「エキス・女性のための正義」のアドリアナ・アギラルさん(43)は「大きな変化があった」と歓迎。ただ、「暴力が発生してからの懲罰的なアプローチだ」とも指摘した上で、「暴力の原因に注意を払うべきだ」と根本的な解決を訴える。
メキシコは男女格差を示した世界経済フォーラムの「ジェンダーギャップ指数」で昨年、148カ国中23位と前年の33位から躍進。42位の米国や118位の日本を大きく上回る。シェインバウム氏の大統領就任に加え、同氏が任命した大臣ポストのうち女性は45%に達しており、同フォーラムは「政治面での格差が約半分埋まった」と評価している。
「対等」な関係を追求する姿勢は外交にも反映されている。トランプ米大統領が導入した追加関税には粘り強い交渉で対応し、大幅な譲歩を獲得した。麻薬カルテル対策としてメキシコ国内への米軍派遣への許可を求めるトランプ氏に「領土は不可侵だ」と断固拒否。一方で、米当局の情報提供を受けて主要カルテルの首領殺害という成果を出した。当初は「水と油」とみられていたトランプ氏と信頼関係を築き、堂々と渡り合っている。
〔写真説明〕メキシコのシェインバウム大統領=2月25日、メキシコ市(EPA時事)
〔写真説明〕国際女性デー2026