電車の“代名詞”が激変!?「ひし形」→「くの字形」 なぜ姿変えたのか 空気抵抗だけじゃなかった

人手不足・老朽化・災害の三重苦

昔の電車といえば「ひし形」のパンタグラフがお馴染みでしたが、最近はスタイリッシュな「くの字形」ばかりに。なぜ姿を変えたのでしょうか? 実はメンテナンス性や雪対策など、知られざる進化の理由が隠されていました。

電車が走るための命綱! パンタグラフの仕組み

 電車は、屋根上の「パンタグラフ」が架線(トロリ線)に接触して電気を取り込み、車両へ供給することで走行します。この装置は、いわば電車にとっての“命綱”ともいえる極めて重要な存在です。

 しかし走行中は、速度の上昇にともなう接触力の変動や、架線のたわみなどの影響で、パンタグラフが一時的に電線から離れることがあります。このように接触が途切れる現象を「離線」と呼びます。

 離線が起きると「アーク放電(火花)」が発生することがあり、これが繰り返されると架線やすり板などの摩耗につながる要因になります。そのため、架線のわずかな凹凸やたわみに追随し、安定して接触を保つ「追従性(接触性能)」が安定走行の鍵になります。

 また、電車の屋根をよく見ると、パンタグラフの数が車両によって異なることに気づくかもしれません。これは、加速時に大きな電力が必要な場合に集電点を増やして負担を分散させたり、故障などのトラブル時に備えて予備を持たせたりするためです。

 特に寒冷地を走る車両では、架線の着氷などへの対応として、編成によっては「霜取り用」のパンタグラフを搭載する例もあります。

なぜ「菱形」から「くの字型」へ進化したのか

 ひと昔前の電車といえば大きな「菱形」が主流でしたが、最近の新造車両では「シングルアーム式」と呼ばれる“くの字型”をした形状が一般的になっています。SNSなどでは、その見た目の変化が「スマートになった」と話題になることもあります。

 シングルアーム式が普及している理由はいくつかありますが、まず大きなメリットに挙げられるのが、構造の簡素化です。シングルアーム式は、従来の菱形に比べて構成部品が少なく、点検やメンテナンスしやすい構造とされています。加えて、形状や部品構成の違いから、高速走行時の空力騒音の低減に配慮した設計として紹介されることもあります。

 さらに降雪地域では、雪の付着や氷雪の影響が課題になるため、雪が付きにくいという観点も見逃せません。

 こうしたメリットから、現在では新幹線から通勤電車までシングルアーム式のパンタグラフを採用する車両が増えており、小田急電鉄は2012(平成24)年度に全車両のシングルアーム化を完了しています。

 なお、パンタグラフの関節(肘)の向きによって空力的な力のかかり方が変わり得るため、空力面の配慮や屋根上のスペースなどを踏まえて設計されるそうです。

 鉄道車両というと、フロントマスクのデザインや内装、モーターや搭載エンジンの性能などに目が行きがちですが、このように目立たない部品に関しても、私たちの安全で静かな移動を支えるための、たゆまぬ進化が詰まっているのです。