なんだか見てて落ち着かない? “1ドア車”に“3輪車”etc… 妙にぞわぞわする「奇数なクルマ」たち

人手不足・老朽化・災害の三重苦

タイヤやヘッドライトといったクルマのアイテムは、多くが当たり前のように「偶数」個のセットになっています。一方こうした装備品を「奇数」で揃えたクルマも世の中には存在します。“奇数なクルマ”には、どんな事情があるのでしょうか。

意外と存在する「奇数なクルマ」

 タイヤやヘッドライト、ドアをはじめ、クルマに備わるアイテムの多くは2つセットなどの「偶数」で揃えられています。しかし、こうした装備品を「奇数」で揃えた事例も、実は少なくありません。半端にも見える“奇数なクルマ”たちは、どのような経緯で生まれたのでしょうか。「1」「3」「5」といった数の順に解説していきます。

 まず、2つ以上のセットが多い装備を「1つ」だけ持つクルマについてです。例えば乗降用のドアは、ボディ左右で1枚ずつ以上の偶数セットになっていることが多い代表的なアイテムといえます。

 ところが、1950年代に欧州各国で生産された「イセッタ」という小型車には、ドアが1枚しかありません。さらにイセッタはボディ左右のどちらかではなく、車体前面にドアを持ち、フロントガラスを含む全体が大きく開く構造になっています。

 これは設計を担当したイタリアのイソ社が、冷蔵庫の製造も手掛けていたことから生まれたアイデア。当時の欧州では敗戦国を中心に“バブルカー”と呼ばれる超小型モビリティが人気を博していましたが、イセッタは前面1ドアという設計により乗降性を確保。当時のカタログには、夫婦と子ども1人の計3人が乗り込んでいる写真も印刷されています。

 続いて、「3つ」セットのアイテムを持つクルマを紹介します。イメージしやすいのは、近年さまざまなベンチャー企業からも発表されている、三輪のクルマやバイク(トライク)でしょう。しかし、世界初のガソリン車は19世紀末にドイツの現メルセデス・ベンツが発明した三輪車であり、実は四輪車より歴史が古いのです。

 また今ではほとんど見かけなくなりましたが、マツダやダイハツなどが戦前~戦後にかけて製造した「オート三輪」は、日本の復興を支えた乗りものです。このうちダイハツは、三輪セダンの「Bee」というモデルも製造。これが同社初の乗用車でした。

 一方もっとも奇妙に見える例のひとつが、「3灯ヘッドライト」を持つ東欧チェコのタトラ「T603」というクルマです。このモデルは1950~60年代のチェコスロバキアを代表する大型高級車で、3連ライトを“寄り目”気味に配置した、独特な顔つきが特徴。当時はチェコ在日大使館の大使も、日本での公務に使用していたといいます。

ハンパじゃない…?「5気筒エンジン」「7速MT」のクルマ

 さらに、クルマの世界で「5つ」という数が良く出てくるのは、エンジンの気筒数でしょう。ドイツのアウディは1976年、フラッグシップ車の「アウディ100」に世界初の直列5気筒ガソリンエンジンを搭載しています。

 このエンジンは、4気筒の経済性や小型さと、6気筒のパワーやスムーズさの両立を狙ったもので、以後アウディの技術的なアイコンとして、スポーツカーやレーシングカーなどにも数多く採用されています。

 また日本でも平成初期に、ホンダがG型と呼ばれる直列5気筒エンジンを開発。「アコードインスパイア」「ビガー」「セイバー」や、「アスコット」「ラファーガ」といったセダンモデルに次々と搭載されていきました。

 ちなみに、ホンダはバイク用の5気筒エンジンも開発したことがあります。2002〜2006年に2輪レースの「MotoGP」に参戦したマシンである「RC211V」には、世界的にも珍しいV型5気筒エンジンが搭載されていました。これは車両重量の下限値をエンジンの気筒数で決めていた、当時の車両規則に則ったもの。パワーや車重のバランスを考慮して、最適と判断されたのが5気筒ユニットだったといわれています。

 最後はアイテム数が「7」となっているクルマに関してですが、ここでは7段ギアの変速機を持つクルマを紹介します。昨今はギアの多段化が進み、ATでは6段ギア以上も珍しくありませんが、一方MTではいまだに6速ギアまでが標準的です。

 しかし、7段ギアのMTを載せた珍しい事例もあります。例えばアメリカの「シボレー・コルベット」(C7型、2014~19年)や、近年のポルシェ「911」には7速MTのモデルも存在。もちろんクラッチ付きであり、シフトレバーにもどこか見慣れない「7速シフト」の変速パターンが描かれています。

3輪・1枚ドア・1灯ライトの「奇数だらけ」カー!?

 ちなみに、日本にはかつて「3輪」「片側1ドア」「1灯ライト」という“奇数ずくめ”なクルマも存在しました。それが1950年代に富士自動車という企業が製造した「フジキャビン」です。

 フジキャビンはシンプルな設計を追い求めた軽自動車で、前2輪・後1輪の3輪、初期モデルではドアも片側1枚のみと割り切った構成でした。また、部品点数削減のためヘッドライトも1つだけでしたが、商業的には失敗。わずか85台のみが生産されました。

 なお現在の日本の道路運送車両法では、自動車の走行用前照灯(つまりヘッドライト)は「左右対称」かつ「灯火数は2つまたは4つ」と定められています。そのため、今後日本で奇数ヘッドライトの新車を販売することは、ほぼ不可能と言っていいでしょう。