【ソウル時事】トランプ米大統領の3月末の訪中が、米朝首脳間の対話再開の契機になるという見方が韓国政府内で出ている。ただ、北朝鮮は米国との対話に含みを持たせつつ「核保有国」としての地位認定を求める姿勢を崩していない。実現の可能性はどれほどあるのだろうか。
「米国と良い関係を築けない理由はない」。北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は、2月19~25日に開催された第9回党大会での政策総括でこう述べた。条件として、米国が北朝鮮の核保有国としての地位を尊重し、北朝鮮への敵視政策を撤回することを求め、米側にボールを投げた。
一方のトランプ氏は、昨年秋の韓国訪問に合わせた正恩氏との会談に意欲を見せていたが、北朝鮮が乗ってこなかったため実現しなかった。米朝対話に「伴走者」(李在明大統領)として関与したい韓国政府には、トランプ氏訪中を「次の機会」と捉える向きがあり、外務省は正恩氏の発言を受け「米朝対話の早期実現に向け外交努力を続ける」と表明した。
もっとも、北朝鮮は非核化を拒否し、米国の出方を慎重に見極める姿勢だ。韓国政府系シンクタンク世宗研究所の申範※(※サンズイに徹のツクリ)首席研究委員は、正恩氏が条件を明示したことで、かえって対話の可能性が低下したと分析。秋に中間選挙を控える中、「トランプ氏としては譲歩してまで会う必要がない」との見方を示した。
世宗研究所の鄭成長副所長は、正恩氏が「朝米関係の展望は全面的に米側の態度にかかっている」と述べたことに注目。2019年にトランプ氏が訪韓直前に提案して板門店での会談が実現した例を踏まえ、訪中に際し、トランプ氏が平壌を訪れると提案すれば「北朝鮮は受け入れる可能性が十分にある」と展望した。
正恩氏は党中央が外交を直接指導すると強調した。韓国の情報機関、国家情報院系シンクタンク国家安保戦略研究院の崔龍桓副院長は「あえて党中央が前に出て直接外交を担当すると言及したのは、首脳外交を試みる意志とも読み取れる」と分析。「米国の態度の変化を待つとしており、ワシントンがどれだけ関心を持つかが焦点だ」と指摘する。
崔氏によると、米朝対話再開は現時点で予断を許さない。トランプ氏は強い関心を持っているとみられるが、米国務省や外交政策決定グループは他の課題に追われている可能性があるという。
〔写真説明〕トランプ米大統領(右)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(当時)=2019年6月、韓国・板門店(EPA時事)