航空券に「環境のための新しい費用」が加わろうとしています。持続可能な航空燃料(SAF)の利用コストを、燃油サーチャージとは別の形で乗客が負担する動きが世界で始まっていますが、いったいどのような影響があるのでしょうか。
航空券に加わる「環境の料金」! 世界で始まった新たな負担の仕組み
航空券を予約する際、代金以外に「燃油サーチャージ」といった項目が並ぶのは、いまやおなじみの光景となりました。しかし、今後はさらに「環境のための新しい料金」が加わるかもしれません。
最新の事例として注目されているのがシンガポールです。シンガポール政府は、2026年4月1日以降に販売される航空券などを対象に「サフ賦課金(SAF Levy)」を導入し、2026年10月1日以降にシンガポールを出発する便から徴収します。
具体的な負担額を日本との路線(エコノミークラス)で見てみると、1人あたり2.8シンガポールドル(1シンガポールドル=120円の為替レートとして336円)がチケット代に上乗せされます。
なお、これはシンガポールを出発する旅客が対象であり、乗り継ぎをするだけの旅客は原則として対象外となります。
そもそも「SAF」とは、トウモロコシなどの植物や使い終わった「天ぷら油(廃食油)」、都市ゴミなどを原料にした環境に優しい燃料のことです。
なぜ、これを使用するのに追加料金が必要かといえば、SAFの製造コストが従来のジェット燃料の3倍から10倍程度という、非常に高い水準にあるからです。
現在はSAFを作る工場が世界的に少なく供給が限られているため、価格が下がりにくい構造になっています。
従来の燃油サーチャージは「原油価格の一時的な変動」に対応するものでしたが、今回の費用は「地球温暖化を防ぐためにあえて高い燃料を使うための追加コスト」という新しい性格を持っています。
2030年に「10%」の壁! 日本や欧州が掲げる脱炭素の目標
環境対策としてのSAF利用は、もはや避けて通れない、必須のものになりつつあります。
EUでは規則により、航空燃料に占めるSAFの最低比率を2025年に2%、2030年に6%へと段階的に引き上げる義務が定められています。
これに伴い、ドイツのルフトハンザグループなどは環境規制の対応コストを運賃に反映する「環境付加運賃」を導入しています。適用条件は出発地が欧州諸国などの便に限られますが、日本発着便であっても欧州発の便などは対象となり得ます。
日本政府も例外ではありません。国土交通省の資料によれば、2030年時点の目標として「本邦エアラインによる燃料使用量の10%をSAFに置き換える」という方針を明確に打ち出しています。
一方で、技術開発も進んでいます。2025年10月にはホンダジェットが、ベリーライトジェットカテゴリー内のツインエンジンジェット機として世界で初めて、SAFを100%使用した試験飛行に成功しました。
航空会社としても、追加コストをすべて自社で負担するのは難しく「環境対策費として別枠で見える化する」などの選択を迫られています。
未来の地球を守るために必要なコストを、旅行者や社会がどのように担っていくのか、今後の動向が注目されます。脱炭素時代のフライトは、燃油サーチャージとは別枠の負担を伴うものになるのは間違いないでしょう。その結果、私たちの旅のあり方にも影響を及ぼすかもしれません。