【カイロ時事】イスラエル政府が占領地ヨルダン川西岸の支配強化を進めている。ネタニヤフ政権の極右閣僚は、現地で暮らすパレスチナ住民排除の野心を隠さない。西岸を将来の国家の版図と見なすパレスチナ自治政府は、パレスチナ人の土地の「事実上の併合だ」と猛反発。自治区ガザで一応の停戦が維持される中、西岸では別の火種が大きくなりつつある。
◇土地所有、立証は困難
イスラエル当局は15日、ヨルダン川西岸の一部地域で登記手続きの開始を決定した。登記が行われるのは、イスラエルが1967年の第3次中東戦争で西岸を占領して以来初めて。パレスチナ住民は土地の所有権の証明を迫られるが、特定の国家に属さない住民が法的根拠を示すのは困難で、立証は不可能に近いとみられている。証明できなければイスラエル当局が「不法占拠」と断じ、立ち退きを強いる展開も想定される。
登記の対象となるのは、西岸の中でもパレスチナ自治政府の権限が全く及ばない地域で、既にユダヤ人入植地の建設が進められている。占領地での入植活動は国際法違反だが、イスラエル側は登記手続きを通じて土地所有の正当化を図るとみられる。一方、イスラエル政府は主にユダヤ人の国民が西岸で土地を購入できるようにする措置を今月8日に承認しており、これも入植地拡大につながりそうだ。
イスラエルの動きについて、パレスチナ自治政府の議長府は15日、「言語道断で、深刻なエスカレーションだ」と非難。国際社会に「危険な行動を止めるための即時介入」を求めた。日本や仏独など85カ国は17日、「いかなる形の併合にも反対する」立場を示した。
◇背景に米国の沈黙
もっとも、イスラエルはこれまでも安全保障や宗教的な理由で、国際社会の批判を無視して入植活動を進めてきた。後ろ盾のトランプ米大統領は「併合反対」を訴えながらイスラエルへの具体的な対応を示していない。ネタニヤフ政権は米国の事実上の沈黙を背景に、西岸での強硬姿勢を堅持している。
最近の世論調査では、西岸の扱いについてユダヤ系市民の41%が「併合」を支持。「パレスチナとの合意による解決」(27%)、「(帰属があいまいな)現状維持」(17%)を上回る。
入植政策を担う極右政党党首のスモトリッチ財務相は17日、西岸にイスラエルの主権を適用し、パレスチナ国家樹立の考えを「打ち砕く」と明言。西岸やガザで暮らすパレスチナ住民の「(第三国への)移住を促進する」と述べた。
〔写真説明〕ヨルダン川西岸ラマラ西方の集落で、パレスチナ人の住宅を取り壊すイスラエル軍の重機=1月21日(AFP時事)