ロシアの侵攻が続くウクライナで日本政府代表として約3年間外交を指揮した松田邦紀前駐ウクライナ大使(66)が19日、侵攻4年を前に時事通信のインタビューに応じた。松田氏は和平交渉の現状について「全面侵攻開始以来、外交による戦争終結に最も近づいている」と指摘。米国が仲介するロシアとウクライナの協議は「極めて重要な局面」を迎えたと述べ、国際社会はさらなる圧力強化でロシア側に妥協を迫る必要があると強調した。
松田氏は、千数百キロに及ぶ前線がこう着状態に陥り、なお前進を試みるロシア軍は日々「莫大(ばくだい)な数の兵士を失っている」と分析。軍事力による目的達成は「失敗に終わった」とし、継続すればさらに損失が拡大するとの見解を示した。
松田氏によると、ロシアでは兵員補充による労働力不足がインフレの一因となり、それを抑え込む高金利政策が投融資を阻害している。戦時経済の「ひずみ」が顕在化し始め、ウクライナによるインフラ施設への攻撃も相まって「社会の不満が徐々に出てきているのではないか」と推測する。
米国の仲介で1月に始まったロシアとウクライナの協議は、ロシア側が停戦監視態勢などを巡り「極めてまともに議論に応じた」と評価。交渉がロシアによる「時間稼ぎ」との見方を否定し、ロシア側が「和平協議に応ぜざるを得ない状況が生まれている」と語った。
一方、停戦ラインの画定や領土問題など「最も難しい問題が残る」とも認めた。交渉のさらなる前進には、欧米や日本が対ロ制裁やウクライナへの軍事支援を通じて「ロシアに圧力をかけ、譲歩させなければならない」と訴えた。
日本に関しては、昨年10月に就任した高市早苗首相が和平のキーマンであるトランプ米大統領と良好な関係を築いていることなどから「ウクライナ側の高市政権への期待は大きい」と話す。
日本が今月、北大西洋条約機構(NATO)の枠組みでウクライナ追加支援策を表明したことについては、「日本の役割の大きさを印象付けることになる」と語った。逆に日本が東アジアで支援を求める立場となった際に迅速な議論が可能になるとし、「回り回って日本の安全保障につながる」と意義を説明した。
◇松田邦紀氏
松田 邦紀氏(まつだ・くにのり)東大教養卒。82年外務省入省。海外広報課長、ロシア課長、香港総領事、パキスタン大使などを経て、21年10月~24年10月にウクライナ大使。66歳。福井県出身。
〔写真説明〕インタビューに答える松田邦紀前駐ウクライナ大使=19日、東京都中央区