【ソウル時事】韓国で「非常戒厳」を宣言し、内乱を首謀した罪に問われた前大統領の尹錫悦被告(65)に対し、ソウル中央地裁は19日、判決を言い渡す。法定刑は死刑か無期懲役、無期禁錮で、特別検察官は死刑を求刑。関連裁判では戒厳宣言が内乱に当たると認定されており、量刑が焦点になる。
起訴状によると、尹被告は2024年12月、憲法が戒厳の要件と定める戦時・事変などに当たらない状況で戒厳を宣言し、軍や警察を動員して国会を封鎖。政治活動を禁じる布告令の発出や中央選挙管理委員会への軍派遣にも関与し、憲政秩序を破壊する暴動を起こしたとされる。
特別検察官は「立法権を掌握し、反対勢力の排除で権力の独占を狙ったクーデターだった」と指摘。自由民主主義を揺るがす事件だったとして、再発防止のため最高刑である死刑を求めた。一方、尹被告は「野党の憲政破壊による非常事態を国民に知らせるための正当な権限行使だった」と反論し、暴動や内乱には当たらないと無罪を訴えた。
憲法裁判所は25年4月、戒厳宣言が憲法上の要件を欠き、重大な違法行為に当たるとして、大統領を罷免した。関連裁判でも国会封鎖などが「暴動」と認定され、内乱の重要任務に従事したとして韓悳洙前首相に懲役23年の一審判決が言い渡された。こうした司法判断の積み重ねを覆し、尹被告が無罪となる公算は小さいが、裁判所が情状をくみ、有期刑へ減刑する可能性はある。
1979~80年の「粛軍クーデター」や戒厳令に関与した全斗煥、盧泰愚両元大統領は退任後に内乱罪で起訴され、97年に最高裁でそれぞれ無期懲役、懲役17年の刑が確定した。特別検察官は「過去の断罪にもかかわらず内乱の企図が繰り返された」として、前例より重い責任追及が必要だと強調した。
韓国では97年を最後に死刑は執行されておらず、事実上の死刑廃止国と見なされる。死刑は象徴的な意味合いが強く、特別検察官も執行を想定せず、重い罰を求めることで国が犯罪に対応する意思を示すのが目的と説明している。19日は尹被告の側近、金龍顕前国防相(求刑無期懲役)ら軍や警察の元幹部7人に対しても判決が言い渡される。
〔写真説明〕韓国前大統領の尹錫悦被告=1月13日、ソウル(EPA時事)