高市早苗首相は衆院選の自民党圧勝を受け、盤石な政権基盤をてこに外交を展開する方針だ。3月に就任後初めて米国を訪問。トランプ大統領と「揺るぎない同盟」を再確認し、結束を内外にアピールする。一方で台湾有事を巡る自らの発言により悪化した対中関係の改善を模索する。
「日米同盟のさらなる強化に向けて共に取り組みを進めることができることを心待ちにしている」。首相は衆院選投開票翌日の9日、X(旧ツイッター)にこう投稿。選挙期間中に自身に対する「全面支持」を表明したトランプ氏のメッセージに応えた。
自民の衆院勢力は3分の2を超える316議席。外務省幹部は「政権基盤の強化は外交にプラスだ」と語り、「強いリーダー」を好むトランプ氏との関係でも有利に働くとの見方を示す。
日米首脳会談はホワイトハウスで3月19日に行われる予定。トランプ氏は4月第1週に中国を訪れ、習近平国家主席と会談する方向で調整中とされており、タイミング的にも首相にとって今年序盤の最重要外交案件になる見通しだ。
西半球重視の「ドンロー主義」を掲げるトランプ氏は、アジアへの関心が薄いと指摘される。首相は中国を念頭に置いた「自由で開かれたインド太平洋」構想への積極的な関与を求め、つなぎ留めたい考え。台湾問題などで日本の頭越しに米中がディール(取引)するのを防ぐ狙いもある。
レアアース(希土類)を含む重要鉱物の供給網強化も確認し、関税交渉で合意した5500億ドル(約84兆円)の対米投融資の具体化を目指す。トランプ政権が同盟国に求める国内総生産(GDP)比5%以上への防衛費増額に関しては、首相が何らか踏み込むかどうかが注目される。
6月には先進7カ国首脳会議(G7サミット)がフランスで開かれる。首相の韓国訪問も検討されている。同志国連携の強化を図る。
対中関係改善は難航が予想される。台湾有事は「存立危機事態」に該当し得るとした昨年11月の首相の国会答弁に中国は猛反発。日本産水産物の輸入再停止や軍民両用(デュアルユース)品の禁輸など圧力を強めた。
首相は習氏と会談し、打開の糸口を探る意向。11月に中国で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を好機とみるが、実現は見通せていない。
首相周辺は衆院選の結果に関し、「高市政権は長く続くから付き合わざるを得ないと中国にも示せたのは大きい」と自信を深める。米中関係の行方に目を凝らしながら粘り強く交渉する構えだ。
〔写真説明〕首相官邸に入る高市早苗首相=12日、東京・永田町