日本政府、インドネシア離島の支援強化=南シナ海、中国けん制

製薬会社の「花形」大幅に減少

 南シナ海南部に位置するインドネシアのナトゥナ諸島で、日本政府が漁業関連の支援を強化している。周辺の排他的経済水域(EEZ)は、中国が一方的に定めた境界線「九段線」と一部重複。日本の援助には、中国の影響力強化をけん制する狙いがあるようだ。
 日本政府は、同諸島最大の大ナトゥナ島東部の中心都市ラナイで、国際協力機構(JICA)を通じて魚市場の整備を後押しする。地元水産局のハディ局長は、現在の市場は小さく排水設備も不十分で、「島民は新たな市場を心待ちにしている」と話す。
 JICAは魚市場のため、約880億ルピア(約8億円)の無償援助を予定。埠頭(ふとう)や冷蔵施設、製氷工場を備えた市場を1年程度で設け、地元経済の活性化を図る。
 マグロやカツオの好漁場として知られるナトゥナ近海では、九段線に基づき管轄権を主張する中国などの漁船が違法に操業してきた。JICAは今後、インドネシアの海洋監視能力を強化する事業も検討しているが、ナトゥナも候補地の一つに挙がっている。
 中国は、同海域で天然ガスなどの資源の保有権も主張。2024年10月にプラボウォ大統領が就任した直後には、海警船がインドネシア国営石油会社の調査船を妨害する事案が発生した。
 翌11月に北京で行われたプラボウォ氏と習近平国家主席の会談では、両国が「主張が重複する海域での共同開発について重要な共通認識に達した」と発表。インドネシアでは九段線を認めたとの批判が相次ぎ、政府は火消しに追われた。
 ナトゥナ諸島はマラッカ海峡に近く、日本にとっても石油タンカーの航路に当たる要衝だ。南シナ海問題に詳しい防衛研究所の庄司智孝地域研究部長は「日本政府は中国の海洋進出の面で、インドネシアと戦略的利害を共有する」と指摘。ナトゥナ支援には「中国の経済進出の前に、インドネシアが自立的な経済活動を行えるよう促す目的がある」と分析する。
 最近はインドネシアと中国の間に表立った対立は見られないが、ナトゥナでは国軍の基地整備や人員増強が進む。「中国がいつ考えを変えるか分からない」。インドネシア政府関係者は警戒感をあらわにした。 
〔写真説明〕国際協力機構(JICA)が支援する魚市場の整備予定地=2025年11月、インドネシア・大ナトゥナ島
〔写真説明〕魚市場に並ぶ魚=2025年11月、インドネシア・大ナトゥナ島