名古屋駅と栄をダイレクトに結ぶ新システム「SRT」が習熟運転を開始しました。2月13日の開業を前に、全長18mの近未来的な連接車体が街中に出現。リニア時代を見据えた、名古屋の新たな移動手段の実力に迫ります。
新たな路面公共交通システム「SRT」
2026年1月6日、名古屋市で新たに導入予定の路面公共交通システム「SRT」が試運転を開始しました。実際の営業路線を利用した本格的な習熟運転となります。正式な運行開始は2月13日を予定しています。
習熟運転の時間は不定期となっていますが、SNS上では車両を見かけた人が相次いで写真を投稿しており、地元・名古屋での注目度の高さがうかがえます。
SRTは「Smart Roadway Transit」の略称で、名古屋市が2010年代から導入を進めていた新しい交通システムです。
地上を走行する公共交通機関なので、形態としては路線バスが一番近い存在といえるでしょう。ただ、その外観は既存のバスとは大きく異なっており、近未来感が溢れるデザインとなっています。
車体の四隅には深緑のパネルが後方までラインのように取り付けられています。それ以外の部分はガラス張りで中が透けており、開放感が感じられます。また、後方2軸のタイヤはボディで隠されており、電車を思わせる形状となっています。
特に目を惹くのは全長約18mというそのサイズ。大型バスで全長12m、中型バスだと8~9mなので、2台分のバスの長さと一緒といえます。前出のSRTは、中央に幌で覆われた連結部分があり、連接バスもしくは路面電車のような姿をしています。
また、低床構造によるバリアフリー性も特徴の1つです。外側から見る限りですが、他の路面バスと比較してドアのステップはかなり低い位置になっています。足の不自由な方や車椅子の方にも乗り降りしやすいでしょう。
定員は122名。公式サイトにアップされている写真を見ると、向かい合って配置している座席もあり、かなり広々とした空間になっています。
SRTは名古屋駅から南に進んだ後、広小路通へ進行。途中で納屋橋エリアや本町通エリアを通行し、栄の停留所まで進んでいきます。そして栄まで来たら、再び広小路通を通ってから、途中国際センター駅に寄りつつ名古屋駅に戻ります。
運行日は金・土・日・月+祝日の週4日程度。9時から17時台で1日12本を運行するそうです。運賃は大人210円、小児100円となっています。
地下に潜る必要なし! 名古屋駅~栄の移動を「地上観光」に変えるSRTの意義
名古屋市がSRTを導入した背景には、2027年に開業する予定だったリニア中央新幹線の存在がありました。リニア中央新幹線の開業によって、名古屋~東京(品川)間は最速で40分にまで短縮可能。これにより東京圏と名古屋圏のさらなる人の往来の拡充が見込まれています。
さらに近年は、世界各国から日本への旅行者が増加中。これに合わせて、名古屋への観光客も増えると予想されています。これに合わせて名古屋駅周辺や、名古屋の繁華街である栄地区では地域の開発熱が高まっています。
たとえば、名古屋駅では名鉄による再開発が計画中。名古屋最大の繁華街である栄地区には、高さ約211mの「ザ・ランドマーク名古屋栄」が2026年夏に開業予定です。ここは、60店舗以上の商業施設に加え、ホテルや映画館も入る新スポットとして期待が集まっています。
SRTはこの名古屋駅から栄地区を接続する路面交通システムです。現在でも名古屋駅と栄地区を繋ぐ交通機関は存在していますが、名古屋地下鉄の中心的な存在である地下鉄名城線とは直接接続されていません。名古屋城最寄りの「名古屋城駅」や栄中心街にある「矢場町駅」へ行くには乗り換えが必要になります。
加えて、愛知県在住の筆者(鈴木伊玖馬:乗りもの好きライター)から見ると、JR名古屋駅から地下鉄名古屋駅のアクセスが悪く、移動するだけでもそれなりの時間がかかります。栄駅側も地下鉄は深い位置にあるため、地上へ上がるまでには相応の時間がかかります。
それだけに、地下鉄までいちいち降りていくことなく、地上部分だけで気軽に名古屋駅と栄地区を行き来できるSRTには、大きな魅力を感じています。特に栄に新しい商業施設ができる2026年夏以降は、利用機会も一層多くなってくるでしょう。
こうしたことを鑑みると、SRTの存在意義はリニアの開業が遅れている現在においても非常に重要だと思います。
定期運行の開始は冒頭に記したとおり2月13日から。ぜひ利用してみたいです。