衆院選の論戦で高市早苗首相(自民党総裁)の食料品消費税ゼロへの姿勢が揺れている。「悲願」と称して前のめりだったが、27日の公示以降は言及を避ける。過去、税を巡る時の首相のぶれは国政選挙の敗因となったケースがあり、2月8日の投開票に向けて高市氏の言動が注目される。
首相は28日、札幌市内など北海道の4カ所で遊説。「危機管理投資」による経済成長の実現や経済安全保障の必要性を訴えたが、27日に続いて消費税減税に触れなかった。
消費税減税は首相の持論だ。ただ、昨年10月の党総裁選では、財務相経験者として財政規律を重視する麻生太郎副総裁の支援を得るため事実上封印した。首相就任後も、レジの改修に1年程度の時間を要するとして慎重姿勢を崩さなかった。
ところが、衆院解散を表明した19日の記者会見で積極姿勢に転じる。2年間に限り食料品を消費税の対象としない考えを示し、実施を急ぐとぶち上げた。
その後も首相は発言を走らせる。26日の党首討論では、超党派で発足させる「国民会議」で結論を出し、今秋に想定される臨時国会に関連法案を提出し、2026年度中の実現を目指すとした。
これは「検討の加速」にとどめた自民の衆院選公約と懸け離れる。野党は強く反発。「制度設計が十分詰められていない」(国民民主党の玉木雄一郎代表)といった声が上がった。首相が沈黙するのは、さらなる攻撃を警戒しているためだとみられる。
実際、食料品の消費税をゼロにすれば、年間約5兆円の税収が失われる。首相は代替財源を赤字国債ではなく、税外収入や租税特別措置の見直しで賄えるとするが、具体策は明示していない。
1998年の参院選で当時の橋本龍太郎首相は従来の財政再建路線を棚上げして「恒久減税」にかじを切ったが、2日後に財源を追及されトーンダウン。これが響いて自民は惨敗し、橋本氏も即時退陣した。
10年参院選では公示直前に菅直人首相が消費税率10%への引き上げを唐突に掲げた。低所得者対策とした還付対象の所得水準で迷走し、与党過半数割れの大敗につながった。
「首相がしゃべれば話が一人歩きする。曖昧にしておいた方がいい」。自民幹部は28日、不安そうにこう語った。
〔写真説明〕街頭演説する高市早苗首相=28日午後、札幌市手稲区
〔写真説明〕街頭演説する国民民主党の玉木雄一郎代表=28日午前、長崎市