日中、途切れた「友好の象徴」=パンダ新規貸与は当面困難―SNSでは不要論も

 【成都時事】東京・上野動物園が飼育していたジャイアントパンダ2頭の中国への返還で、「日中友好の象徴」と呼ばれてきた両国間のつながりが途切れた。昨秋以降、急速に冷え込む日中関係は改善の兆しが見えない。中国側からの新規貸与は当面困難な情勢だ。
 「日本の人々がパンダを見に中国へ来ることを歓迎する」。中国外務省の郭嘉昆副報道局長は21日の記者会見でこう強調したが、今後の貸与計画については回答を避けた。
 2頭の返還はもともとの決定事項だが、中国側は昨年夏ごろまでは日本とのパンダ保護協力の継続に意欲を示してきた。日本は繁殖面で多くの実績を持つ。日中友好議員連盟の森山裕会長(自民党前幹事長)らによる訪中時の働き掛けでも好感触を得ていたとされる。
 ところが、中国の習近平政権は昨年11月以降、高市早苗首相の台湾有事発言をきっかけに日本への態度を急速に硬化させた。発言の撤回を要求し、自国民に訪日旅行の自粛を呼び掛けているほか、日本産水産物の輸入を停止するなどの報復措置に出た。
 官製メディアは、日本からパンダが消えるのは高市政権に非があるためだとの論調を広めている。北京の有力紙「新京報」は19日、「日本がパンダを望むなら、まず台湾など中国の核心的利益の問題に関して誠意を見せるべきだ」(陳洋・遼寧大日本研究センター客員研究員)とする記事を掲載。別れを惜しむファンの様子も詳細に報じており、国内向けに「日本は打撃を受けている」と宣伝する狙いがあるもようだ。
 北京の外交筋は「今の日中関係では(パンダは)我慢するしかない」と語る。中国はパンダを「外交カード」と見なしており、首脳級の会談が実現しなければ交渉は難しいという。
 日本への新規貸与は2011年が最後だ。18年に訪中した安倍晋三首相(当時)は、貸与へ向けた調整を進めることで中国側と一致したが、実現しなかった。
 パンダが初来日した1972年当時と異なり、近年の世論調査では中国に悪印象を持つ日本人の割合は約9割に上る。パンダの存在がかつてのような「友好の象徴」たり得るのか疑問視する向きもあり、SNSでは「パンダはもう要らない」との意見も少なくない。 
〔写真説明〕パンダのホアンホアン(左手前)、カンカン(左奥)を見に訪れた多数の見物客=1980年2月、東京都台東区の上野動物園