最低運賃の切符で長距離を楽しむ「大回り乗車」。不正乗車のように思えますが、実はJRの規則で認められた仕組みです。一体どのようなルールで、どんな条件があるのでしょうか。
最安運賃で長距離も可能 ”大回り乗車”を実現する2つの規則
鉄道ファンの間で「大回り乗車」と呼ばれている不思議な利用方法があります。2025年12月現在、東京圏の最低運賃は150円(ICカード利用時は146円)ですが、条件を満たせばこの運賃で長距離の乗車になる場合もあるのです。
一見すると不正乗車ではないかと疑ってしまいそうですが、これはJRが定める「旅客営業規則」などの公式ルールに基づいた乗り方です。
その根拠の1つが、旅客営業規則第157条第2項です。この規定では、特定の「大都市近郊区間」の中だけで完結する旅をする場合、乗車券の券面に記載された経路にかかわらず、他の経路を選んで乗車できるとされています。
さらにJRの案内では、同区間内のみを利用する場合、「実際の乗車経路にかかわらず、最も安くなる経路で計算した運賃で利用できる」という特例が明示されています。
これらの規定により、エリア内であれば実際の乗車経路が最短ルートより長くなったとしても、最短距離の運賃で利用することが認められているのです。
たとえば、隣の駅へ行くために遠くの路線を巡るルートを選んでも、ルール上は最短運賃だけで済むというわけです。まさに鉄道界の“知る人ぞ知る”トリビアと言えるでしょう。
重複は厳禁 2025年に拡大した最新エリアと守るべき”3つの鉄則”
この特例を利用するための鉄則、その1つ目は「ルートを重複させない」ことです。JRの案内では、経路が重複しない限り、乗車経路は自由に選べるとされています。一度通った駅や路線を二度通ることはできず、同じ駅に戻ってくることもできません。
2つ目は「エリアをまたがない」ことです。この特例が使えるのは、東京、大阪、福岡、新潟、仙台の5つの近郊区間内での利用に限られます。エリアの外に出たり、エリア外の駅を経由したりする利用には適用されません。
ちなみに、2025年3月15日からは東京近郊区間が拡大され、篠ノ井線・信越本線の松本~長野間と、大糸線の松本~穂高間が新たに対象となりました。さらにJR東日本は、2026年3月14日から大糸線の穂高~白馬間も東京近郊区間に追加すると発表しています。
3つ目の大きな注意点が「途中下車はできない」という点です。途中の駅で改札の外に出ると、区間変更として扱われ、不足があれば実際の乗車区間に基づいた精算が必要となります。
また、切符の有効期間は距離に関係なく「発売当日限り」となることも忘れてはいけないポイントです。
最短の運賃で遠回りを楽しめるこの制度は、JRの規則によって定められた特別な仕組みです。ルールを正しく理解して、マナーを守った鉄道の旅を楽しみましょう。