高知駅前観光が、日本唯一のフルフラット夜行高速バス「フラットン」を運行しています。今回、新型シートを搭載したフラットンが運行を開始。初日の便に早速乗り、新型フルフラットシートの寝心地を実際に体験しました。
出入口に靴箱
東京~高知間を走る「フラットン」は、日本で唯一のフルフラットシート「ソメイユプロフォン」を装備した夜行高速バスです。2026年1月9日、新型のソメイユプロフォン「S-02」を装備したバスが運行を始めたので、初運行に乗車しました。
このS-02は、従前型のモニター運行で寄せられた意見を反映したものです。筆者(安藤昌季:乗りものライター)は初運行の出発前に高知駅前観光の本社を訪れ、新型バスを見せていただきました。
バスは三菱ふそうの「エアロエース」をベースとしたピカピカの新車です。外観は白地に水色の帯や文字などが配置されたシンプルな印象で、かわいい「FLATON」のロゴがアクセントのように配置されています。デザインは命名者の意向も反映されているのだとか。
新型バス車内に入ると、従来型のソメイユプロフォンを装備した車両と明確な違いがあり、驚きます。
「靴箱が、ある」
バスの入口部分に靴を脱ぐ場所があり、その横に靴箱があります。バスは構造上、通路が狭く、靴の管理を乗客に委ねると通行の妨げになりかねないため合理的な判断です。
「座席ユニットを後方に寄せることで、入口部分に靴箱スペースを設けました。ただ、従来型のように途中でお客さまがすれ違う場所はなくなっています」(高知駅前観光)とのことですが、インパクトのある配置です。自宅の玄関のように靴箱が出入口にある高速バスというのは多分、日本初でしょう。
使い捨ての耳せん、おしぼり、歯ブラシセットと貸出用のアイマスクが入口に置かれているのは、従来型と一緒です。
寝台ユニットは、1+1+1列で置かれているのは一緒ですが、明確な改良点があります。各区画にUSBポート、ドリンクホルダー、小物入れ、荷物棚があることです。これに伴い、上段寝台の横に置かれた荷物棚はなくなっています。
許可を得て、まず下段寝台に横になります。座席幅を計測すると上段51cm、下段52cm。下段の高さは従来型より数cm拡大し55cmとなりましたが、このわずかな差で出入りも楽ですし、新型区画内で方向転換がかなりしやすくなりました。長さは上段で178cmありました。
トイレ前のスペースは空き地のまま。このスペースの活用方法については「検討中」とのことです。更衣室や貴重品を入れるロッカーが適当と思いますが、そもそも通路が細く車内の移動が大変なため悩ましいところです。
従来型の乗車率は、「12月は乗車率80%です。なお、弊社の高速バスの認知度が高まったのか、従来型4列シート『スマイルライナー』の乗車率も上がっています」(高知駅前観光)とのことでした。
「身の回り」がいろいろ改良
それでは乗車します。フラットンが高知駅バスターミナルに19時25分頃入ってきました。出発は19時40分です。
乗車の際、大きな荷物は持ち込めないことや、土足禁止などの説明を受けます。室内に入ると車庫での撮影時と異なり、毛布の入ったビニール袋が各区画に置かれていて、より「寝台」に近い雰囲気です。
筆者は、最前列中央の13番を予約しました。モニター運行時と異なり座席指定ができますが、ここが一番良い席だと思います。バスの構造上、前に行くほど屋根が高くなるからです。
最前列の13番は、寝台から天井まで一番高い所だと90cmもあるため、寝台上で座っても頭がぶつかりません。また、大半はカーテンがありますが、少しだけ前面展望も楽しめます。
枕元にはドリンクホルダーと小物入れと、USBポートがありますが、位置はよく考えられており、使いやすいです。やや上半身を起こして飲み物も飲めます。USBポートは完全消灯後も光っていて位置が分かるので便利です。
寝具は従来型と異なります。枕は同じですが、クッションの素材が変わりました。やや固めとなっています。筆者は柔らかい布団が好みなので、ここだけは従来型の方が良いと感じました(全区間乗車した後の疲労度も異なりました)。
寝台区画は、上段から下段に物が落ちにくく改良されています。
寝台区画の天井には、網でできた小さな荷物置き場が設置されました。ポシェットくらいは置けます。設置されたことは大きな改良です。荷物置き場は滑りにくく、安定感もありますが、位置が頭上なので落下が怖いです。片側は蓋付きでもいいかもしれません。
また、2025年10月の「バステクin首都圏」の展示時は、寝台に傾斜が付いていましたが、この車両はフルフラットでした。ここは、やや角度があっても良いと感じました。
商売っ気がない?
乗客が乗ってきます。靴箱に戸惑いがあるようで、4人が靴を置かずに区画に行き、後で気付いて靴を置きに来ました。
バスは19時40分、高知駅前バスターミナルを出発しました。車内放送でフラットンの案内が流れ、乗務員からも肉声で補足が入ります。
ただ、「本日が新型車両の初運行です」のようなアナウンスがないことは意外でした。ウェブサイトにも掲載がないので「初運行と書いても良いですか」と、筆者が許可を得たほどです。ここについては、大きな改良をしたのですから、もっと商売っ気があっても良いように思います。
乗客は7割が女性でした。寝台区画が3方向にカーテンで覆われ、個室感が大きいソメイユプロフォンは、消灯後も他人のスマートフォン操作が気にならず、若い人たちにも支持されているのが客層でも分かります。
寝心地はかなり良く、試しに横になったところ寝落ちしてしまい、気付いたらバスは高速鳴門バスストップに。22時発で2人が乗車したところでした。車内は満席です。ちなみに高速鳴門バスストップへは、JR徳島駅を21時に出る「ボートレース鳴門」行き徳島バスから乗り継げます。
22時15分、神戸淡路鳴門道の淡路島南PAで10分休憩。15人以上が降りて、外の空気を吸っていました。
出発すると、車内はほどなく完全消灯され、真っ暗となりました。物音はほぼ無くなり、乗客は寝入っていることが分かります。
3時頃、トイレに行きたくなり最後部へ。足元灯などはなく、真っ暗の中、人に触れないよう上段寝台の床面をガイドに慎重に移動しました。
バスが新しいこともあり、乗り心地はかなり優れています。なお、衝突防止機能が強化された車両で、取材日でもセンサーで危険を察知してブレーキしていました。
翌朝、所定より10分早い4時50分に東名高速の海老名SAに到着します。ここでは番号札が配られました。早朝ですが、10人ほどが休憩しました。早く着いたので5時10分まで20分ほどの休憩でした(時刻表では10分休憩)。
そのまますんなり渋滞もなく、所定より35分早い6時25分にバスターミナル東京八重洲に到着。11時間の長旅でしたが疲れもほぼなく、新型フルフラットシートの快適さを実感しました。