尹前大統領に内乱罪求刑へ=戒厳宣言、死刑も―韓国

 【ソウル時事】韓国の尹錫悦前大統領が2024年12月に「非常戒厳」を宣言し、内乱を首謀した罪で起訴された事件の論告求刑公判が9日、ソウル中央地裁で開かれた。同罪の法定刑は死刑または無期刑。特別検察官の求刑が予定されるが、弁護側の証拠調べが長引いている。2月に出るとみられる判決は、民主化後に初めて行われた戒厳宣言に対する初の刑事判断となる。
 白髪交じりの尹被告は黒のスーツにノーネクタイ、白いシャツ姿で、落ち着いた様子で出廷。時折、弁護人と会話する様子もみられた。共犯として内乱重要任務従事などの罪に問われた金龍顕前国防相や軍、警察の元幹部も法廷に姿を現した。
 尹被告は25年1月、現職大統領として初めて内乱首謀罪で逮捕、起訴された。起訴状によると24年12月3日、金被告らと共謀し、権力を独占する目的で憲法秩序を乱す戒厳を宣言。軍や警察を動員して国会を封鎖し、兵士を議事堂に侵入させたほか、政治活動を禁止した布告令の発出や中央選挙管理委員会への軍派遣にも関与したとされる。
 尹被告は戒厳宣言が大統領の権限行使だったと主張。「軍や警察は暴力的ではなく、国会の決議を受け入れて戒厳を解除した」と反論した上で「(内乱罪に当たる)クーデターではない」と無罪を訴えている。
 憲法裁判所は25年4月、戒厳宣言に重大な違憲、違法性があったと認定し、尹被告を大統領職から罷免した。6月に李在明政権が発足した後、特別検察官が任命され、捜査が拡大。尹被告や政府、軍の元高官ら計27人が内乱罪、職権乱用罪などで起訴されている。
 尹被告は、内乱だけでなく職権乱用、公選法違反をはじめとする複数の裁判を抱えている。捜査機関の令状執行を妨害したとされる事件の判決は内乱事件より早く、1月16日に言い渡される予定だ。
 過去には1979~80年の「粛軍クーデター」や戒厳令に関与した全斗煥、盧泰愚両元大統領も退任後に内乱罪で起訴され、97年に最高裁で無期懲役などの刑が確定した後、特赦された。韓国では死刑は廃止されていないものの、同年以来執行が停止されている。 
〔写真説明〕2024年12月、ソウルで非常戒厳を宣言する韓国の尹錫悦大統領(当時)(大統領府提供)(AFP時事)