【ロンドン時事】トランプ米大統領が「安全保障のため」領有を目指すデンマークの自治領グリーンランド。北極圏に位置する戦略的要衝のこの島は、南米ベネズエラを攻撃したトランプ政権が介入を画策する「次の標的」とされる。デンマークが北大西洋条約機構(NATO)加盟国であることなどから、現状では「軍事侵攻の可能性は低い」(英専門家)とみられるが、トランプ氏の野心は大きく、軍事・経済の両面から関係国などへの圧力を一層増していく見通しだ。
グリーンランドはロシアへの近さから戦略的重要性が高く、米国はデンマークとの防衛協定の下、島内に軍事基地を有している。しかし、島全体の支配を狙うトランプ氏は1期目に島の買収案を提示。2期目に入ってからは圧力を強め、今月3日のベネズエラ攻撃後は軍事力をちらつかせて露骨に移譲を迫っている。6日には、米政権内で領土購入など複数の選択肢が協議されていると伝えられた。
トランプ氏がグリーンランドに固執する背景には、安保戦略以外にも、地球温暖化による氷床の融解で地下資源へのアクセスが容易になったことがあると言われる。英スカイニューズによると、デンマーク王立防衛大学のピーター・ビゴ・ヤコブセン准教授は、産油国ベネズエラとグリーンランドには「明白な類似点がある」と指摘。防衛協定を結んでいながら併合にこだわる真の目的が、豊富な鉱物資源にあると分析した。
ただ、仮にNATOの中核である米国が、加盟国デンマークに軍事力を行使してグリーンランドを併合しようとすれば、集団防衛を柱とするNATOの機能の「全てが停止する」(フレデリクセン・デンマーク首相)ことになる。このため、当面は脅しを用いながら譲歩を引き出す構えとみられるが、そもそもNATOの理念に否定的なトランプ氏にとり、併合は「同盟にどんな破壊的影響を及ぼそうとも、あらがい難い」(スカイニューズ)利点があると言える。同氏が今後どのような行動に出るか、予測がつかないのが実情だ。
〔写真説明〕トランプ米大統領(左)とデンマークのフレデリクセン首相(AFP時事)
〔写真説明〕グリーンランドの中心都市ヌーク沖を巡視するデンマーク海軍の艦艇=2025年3月(AFP時事)