造船で国内トップシェアを誇る今治造船が、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)を子会社化しました。これにより国内シェア50%、世界4位の巨大造船グループが誕生し、日本の造船業の今後が注目されます。
世界4位の造船グループ誕生 その背景は
政府が2025年末、10年間で官民合わせて1兆円規模の投資実現を目指すロードマップを策定したことで大きな注目を集める日本の造船業。既存船のリプレース需要が見込まれるなど追い風が吹く中、国内トップシェアを誇る今治造船が2026年1月5日、総合重工の造船部門をルーツに持つジャパンマリンユナイテッド(JMU)を子会社化しました。これにより国内シェア50%、世界シェアで第4位の造船グループが誕生しました。
今治造船の檜垣幸人社長は1月6日に開かれた会見で、「造船関係のオールジャパンというよりは、日本の産業界全部と連携を取っていく。世界で勝つ前に、日本の経済安保として物流を担う船を日本で作り、日本で持つという体制を作るのが我々の使命だと思っている」と話しました。
JMUは2013年1月、ユニバーサル造船とアイ・エイチ・アイ マリンユナイテッド(IHIMU)が合併して発足しました。前者は日本鋼管(NKK、現JFEホールディングス)と日立造船(現カナデビア)の船舶部門の統合会社、後者は石川島播磨重工業(IHI)の船舶海洋事業と住友重機械工業の艦艇部門が統合した会社であり、重工系造船企業の再編に次ぐ再編の象徴ともいえる企業です。
これまでJMUが手掛けてきた船種はタンカー、バルカー、コンテナ船から、LNG(液化天然ガス)船、カーフェリー、自航式SEP船(自己昇降式作業台船)、海上自衛隊の護衛艦や海上保安庁の巡視船、さらには芦ノ湖の観光遊覧船まで多岐にわたります。
しかし中国・韓国の造船業が台頭したことで受注競争が激化し、日本の造船シェアが下がり続ける中で生き残りを模索する必要が出てきました。JMUは舞鶴事業所(京都府)での商船建造から撤退する一方で、今治造船と資本業務提携を結び、2021年1月には共同の営業・設計会社「日本シップヤード(NSY)」が設立されました。
NSY発足時に営業のトップだったJMUの廣瀬 崇社長は「最初はどういったシナジーを出せるかは手探りの状態だったが、市況の改善もあって受注や上流設計の融通などいろいろ成果があったと思っている」と振り返ります。
そして2025年6月26日、JFEとIHIが所有するJMU株式の一部を今治造船が取得することで合意しました。これまでの出資比率はJFEとIHIがそれぞれ35%、今治造船30%でしたが、取り引きの成立に伴って今治造船が60%、JFEが20%、IHIが20%となっています。商船の新造ヤードは今治造船グループの10工場にJMUの3工場が加わる形になり、13工場がどのように連携していくかが課題となります。
「これから生産、調達でどういったシナジーを出せるかというところを、チームを作りながら議論をしていくことになると思う」(JMU廣瀬社長)
全株式は取得せず「もう、船は“船を超えた”世界」
ただ今回、今治造船はJMUの株式を全て取得しませんでした。その理由について檜垣社長は、次世代燃料船やAI(人工知能)、ロボットといった新しい技術を念頭に「造船分野だけではやっていけない時代が来ている」と強調し、JFEやIHIの見識が必要だと話します。
「今治造船は船づくりでは競争力を持ってきたが、LNG(液化天然ガス)やアンモニア、水素などの新燃料は完全にケミカルの世界に入ってくる。そのため、いわゆるプラントメーカーとどんどん融合していく必要がある。船を超えた世界に入ってきており、日本の全ての業界と見識を高めていく意味で、IHIとJFEを外すという選択肢は全く考えていなかった」(今治造船・檜垣社長)
また、新造ヤードの再編や集約については、政府が船舶建造量の倍増を掲げていることから「休止している設備を稼働するということはあっても、減らすことは無い。これから分母を増やしていくことに注力していきたい」と意気込んでいました。
今の日本でシェアを失い、建造が停止している船種の一つが「LNG運搬船」です。この建造再開に関して檜垣社長は「検討している」と述べ、JMUの廣瀬社長も「FS(フィージビリティ・スタディ)を行っている」と述べています。
一方で政府が2025年末に発表した「造船業再生ロードマップ」に盛り込まれた造船企業の「1―3のグループ体制へ集約」については、「私もびっくりした」(檜垣社長)、「寝耳に水の話だったので、ロードマップに書いてあったことに非常に驚いている」(廣瀬社長)と話します。
檜垣社長は「業界の1位(今治造船)と2位(JMU)がグループとなり、各造船所も生き残った企業は全て強いものがあることから、これ以上グループ化する意味があるのだろうか」と疑問を呈します。
ただ、「設計能力に限界を感じているところがあるので、オールジャパン体制で設計関係のアライアンスはどんどんしていきたい」と意気込みました。