地味に進むJR普通列車の「ロングシート化」仕方ないことのか? 旅情・快適さ・それより“効率”という時代

JR各社でボックス席や転換クロスシートの従来車両から、ロングシートの新型車両に変わるケースが続いています。旅行者には「ガッカリ」ですが、混雑してくると合理的な面もあり、ロングシートの良し悪しは判断が分かれるところです。

各社で進むロングシート化

 JR各社は、通勤・通学などに使用する普通列車用車両の世代交代を進めています。これに伴い、ボックス席や転換クロスシートの従来車両から、ロングシートの新型車両に変わるケースが続いています。

 JR東日本は2025年度に、新型のHB-E220系を高崎・盛岡エリアに投入。JR東海は2021年度から2025年度にかけて新型315系の導入を進め、まもなく予定の両数に達する見通しです。

 地方を走るJRの普通列車は、ボックス席や転換クロスシートなど、列車の進行方向に向けた座席を備えた車両が多く使われてきました。しかし、これらの新型車両は車内設備も変わり、都市圏の通勤電車のような、窓に背を向けて座るロングシートと呼ばれる座席配置が採用されています。

 JRは会社の規模が大きく、抱えている路線も長大です。新幹線や特急列車などの長距離列車を数多く運行していますが、山手線などの都市圏の路線を除くと、JRの各路線で運行されている普通列車も運行距離が長い傾向にあります。そのため、普通列車の車両もトイレを備えるなど、客室設備を移動時間の長さに合わせています。

 かつての車両では、ボックス席による向かい合わせの座席を備えることで、大勢の乗客に座ってもらう設計で造られていました。さらに、客室のサービスレベルを上げた車両では転換クロスシートを備え、進行方向によって座席の向きを変えることで、多くの乗客が進行方向の座席に着席できるよう配慮されています。

 一方で、ロングシートは客室の通路を広く取れるため、ラッシュ時間帯に大勢の立客が乗車するのに適しています。また、通路の広さは列車の乗り降りがしやすい点でも有利です。

 ひと昔前は、都市圏を中心に、通勤・通学輸送の混雑が目立つようになると、ボックス席をやめてロングシートとすることで混雑を緩和する動きが加速しました。

 特に目立つのが首都圏です。1987(昭和62)年にJR東日本が発足した頃はボックス席の車両が多数派だった路線も、現在は多くがロングシートの車両に置き換わりました。東海道線をはじめ、東北(宇都宮)・高崎線、常磐線などがその例で、横須賀・総武快速線も車両の世代交代などで、現在はロングシートの車両が主体となっています。

旅行先で「ガッカリ」

 JR東日本は、仙台地区や秋田地区といった地方の都市圏でも「ロングシート化」を進めています。1993(平成5)年から701系電車を順次導入し、ボックス席を備えた電車や客車を置き換えていきました。701系は2~3両で運転され、座席の数も減ったことで長い距離を立って乗車する事態も招いています。

 着席できたとしても、ロングシートなので座席から見えるのは外の景色ではなく、向かい側に座っている「知らない人」ということも。旅に出たつもりが、普段の通勤・通学と大して変わらない風景になってしまったのです。

 JR東海も、1989(平成元)年から東海道線などの211系5000番代でロングシートが採用され、特に静岡地区では、ロングシートの車両で長い乗車時間を過ごすことになりました。しかも、211系5000番代はトイレがない車両が多数あったため、トイレのために見知らぬ駅で降りる羽目になった人も多いのではないでしょうか。

 一方で、競合を抱える路線では客室設備の水準を上げる取り組みもありました。JR西日本は1989年に登場した221系で転換クロスシートを採用し、以後のJR西日本の車両で標準的な座席配置として継承しています。

 JR東海も、名古屋地区に導入された311系に転換クロスシートを採用しました。後継の313系は、名古屋地区に導入された車両は転換クロスシートを採用した一方、静岡地区に導入された313系はロングシートが主体です。そして今回、315系が東海道線にも導入されたことで、名古屋地区の東海道線にロングシートの車両が復活しています。

 JR北海道は、札幌近郊で使用する車両などでロングシートを採用しています。新千歳空港と札幌・小樽を結ぶ快速「エアポート」は733系電車への置き換えを進めていますが、一般の車両は転換クロスシートの車両からロングシートになっています。

 JR九州は転換クロスシートをロングシートに改修して混雑を緩和させる取り組みを進めています。福岡地区の車両を中心にロングシート化が進んでおり、811系や813系、817系でもロングシート化が進行中です。

ロングシートvs.クロスシート

 先の通り、ボックス席や転換クロスシートを備えた車両は、ロングシートの車両よりも長い乗車時間に適しています。実際に乗車してみると、ボックス席や転換クロスシートの車両の方が、長く乗っていても疲れにくい印象があります。一方で、2人掛け座席で隣に知らない人が座って来るのに抵抗感があったり、車内が混み合っていると乗り降りしづらかったりするのも事実です。

 筆者(柴田東吾:鉄道趣味ライター)は、湘南新宿ラインにあるボックス席を好んで使っていますが、1~2時間乗車していても疲れにくい印象があります。また、眠くなっても窓側であれば窓に寄りかかって寝ることで、うっかり隣の人に迷惑をかけることもありません。列車が空いていれば、車内で飲食しても周りの人の視線が気にならないのも利点です。

 一方で、車内が混み合っていると、目当ての駅で降りづらいのが欠点でもあります。池袋や新宿といった駅で降りる際、ボックス席の窓側から降りようとすると通路側に座っている人に気を遣うことになります。通路側に座っている人が寝てしまい、寝ている人にブロックされる形で降りづらい経験をしたことも少なくはありません。

 ロングシートであれば、このような気遣いは無用で、乗り降りのしやすさではロングシートの方が便利です。また、ボックス席で窓側に座っている人がいると通路側に座りづらく、座席が空いているのに立つ羽目になることもあります。

 このほか、ロングシートの方が車内の見通しが良く、ワンマン運転の際には車内を移動して運転士に運賃支払いや切符提示を行う際にも有利になります。

 ロングシートが良いのか、それともボックス席や転換クロスシートのようなクロスシートの車両が良いのか、判断が分かれるところです。

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