沖縄県・下地島にある「下地島空港」近辺に、かつて訓練に来ていたANAのパイロットたちが泊まっていた施設があります。現状はどのようになっているのでしょうか。泊まってみました。
現在は「普通のホテルとして泊まれます」
マリンレジャーで人気の沖縄県・下地島にある「下地島空港」は、かつて日本の航空会社も離着陸訓練を行っていたことから、近くにANA(全日空)のパイロットたちが泊まる施設がありました。施設は今も一般のホテルとして営業し、館内には「在りし日」をしのばせる“痕跡”が残っています。
ANAのパイロット宿舎だったのは下地島空港から1kmほど離れた「下地島コーラルホテル」です。オレンジ色の瓦を乗せた沖縄県らしい明るい建物でビジネスホテルといった趣ですが、乗員の宿舎、つまり社用として使われていたと聞けば、なるほどと思わせるシンプルな外観でもあります。
館内は清潔感があり、正面入り口脇に置かれたアメニティーグッズを取って入った部屋は大手ビジネスホテルのそれよりゆったりと大きめで、程よく休めました。こんなところも訓練に励む乗員用の宿舎だった名残かもしれません。
室内はベッドの他に簡易机や1人掛けのソファがあり、ユニットバスが付属しています。バスの壁をふと見ると、「全日空固定資産」と書かれた小さなシールが。2025年現在の宿泊客はマリンレジャーを楽しむ長期滞在者が主と見られ、使ったバスタオルなどは廊下のかごに銘々がいれるなどセルフサービス化が図られていました。
そして、パイロットの元宿泊施設だったと“語り継いでいる”のが廊下のポスターです。
ANAカラーのボーイング747-400をアピールしたものに写っている機体の登録記号は「JA8094」。747-400のANA初号機で、当初は470人乗りの国内線仕様として1990年11月に就航しました。ポスターの下の辺りに「テクノジャンボ」と記されていますが、この愛称は社内公募で選ばれています。747-400は在来型の「ジャンボ機」から設計や操縦システムを一新したのに加え、就航が迫った1980年代後半ごろは音楽ジャンルで「テクノポップ」が流行していました。こんなことも「テクノジャンボ」に決まった背景かな、とポスターを見ていると想像してしまいます。
まだあった「元パイロット宿舎」っぽいところ
もう1枚。エアバスA320が写るポスターの機体の登録記号は「JA8382」。こちらもANAのA320初号機です。JA8382は1991年2月に羽田空港へ運ばれましたが、当時は前月にアメリカを中心とした多国籍軍とイラクが戦った湾岸戦争が始まったことから中東を経由出来ず、大西洋から太平洋を回り、欧州から羽田まで6日間もかかったエピソードがあります。どちらのポスターも、やや色あせていますが、それがかえって「あの頃」を知る世代に懐かしさを感じさせます。
そのほか目についたのは、ANA社内にしか貼られないであろうコアなポスター。「離陸中止によるリスクを避けよう」と事故防止を啓発したり、「定刻通りの航空会社ANA」と旅客サービスを訴えたりしています。これらも、このホテルが確かにANAパイロットの宿泊施設だったことを伝えていました。
ホテルによると、筆者が訪れた11月下旬はマリンレジャーのシーズンはひと段落したとのことで、島全体がゆったりとしたムードに包まれていました。それでも空港近くの入り江でシュノーケリングを楽しむ観光客を見ることができ、空港端の通称「17エンド」も団体の観光客が訪れていました。2026年にまた観光シーズンが到来すればホテルもにぎわい、ポスターに目をとめる宿泊客も多いことでしょう。