道路を走っていると見かける、白い「ダイヤマーク」。教習所で習ったはずですが、意味を即答できるでしょうか。実はこのマーク、ドライバーに「ある準備」を促す重要なサインなのです。
「あと何メートル?」 ひし形マークに隠された厳密な距離ルール
クルマなどで道路を走っていると、路面に描かれた白い「ダイヤ(ひし形)マーク」を見かけることがあります。なんとなく通り過ぎている人も多いかもしれませんが、このマークには法律で決まった厳密な設置ルールがあることをご存じでしょうか。
そもそも、このマークの正式名称は、指示標示「横断歩道又は自転車横断帯あり」といいます。その名の通り、「この先に横断歩道がありますよ」とドライバーに予告するためのものです。
実はこのマーク、適当な場所に描かれているわけではありません。警察庁の基準では、原則として「横断歩道の手前50メートル」と「30メートル」の2か所に設置することになっています。
つまり、最初のひし形が見えたら「あと50m」、2つ目が見えたら「あと30m」で横断歩道が現れるという、正確なカウントダウンになっているのです。
2回に分けて知らせることで、ドライバーの見落としを防ぎ、十分に減速させる狙いがあります。
さらに重要なのが、「信号機のある横断歩道の手前には、原則として設置されません」という点です。
つまり、ひし形マークがあるということは、その先にあるのは「信号のない横断歩道」である可能性が高いということになります。歩行者がいても赤信号で止まってくれるわけではないため、ドライバーが自ら気づいて止まらなければなりません。
このマークは、単なる模様ではなく「この先、危険度が高い横断歩道があるから注意して!」という、道路からのメッセージだと言えるでしょう。
スルーしたら「9000円」いまだ止まらないクルマが多数!
では、このひし形マークを見かけたとき、ドライバーはどうすればよいのでしょうか。
道路交通法第38条には、横断歩道に近づく際のルールが定められています。法律の言葉は少し難しいですが、噛み砕いて翻訳すると、「明らかに誰もいない時以外は、いつ誰が飛び出してきても、ブレーキを踏めばその場で止まれる速度まで落としなさい」になります。
「歩行者がいるかいないか、わからない」という迷いがある時点で、アクセルを踏んだまま通過するのは、実は交通違反なのです。
もし、歩行者が渡ろうとしているのに止まらなかった場合、「横断歩行者等妨害等違反」となり、普通車であれば反則金9000円、違反点数2点が科されます。「止まらなかった代償」は、決して安くありません。
JAF(日本自動車連盟)が2025年に公表した調査データによると、信号機のない横断歩道で歩行者が渡ろうとしている場面で、一時停止したクルマの割合は56.7%でした。
前年の調査から改善し、過去最高の数値を記録したものの、いまだに「4割以上のクルマが止まっていない」のが現実です。
ひし形マークは、単なる道路の飾りではありません。「アクセルから足を離し、ブレーキの準備をする合図」です。
このマークが見えたら速度を落とし、歩行者がいたら必ず止まる。そんなスマートな運転が増えれば、悲しい事故も、手痛い出費も減らすことができるはずです。