街で停車中のトラックの荷台。そこに、ひそかに身をひそめていた猫が、そのまま走り出したトラックで遠く離れた土地に運ばれてしまう――。そんな想像しづらい事態が、実際に起きています。
トラックで運ばれた“迷い猫”たち 実例が語る現実
街で停車中のトラックの荷台。そこに、ひそかに身をひそめていた猫が、そのまま走り出したトラックで遠く離れた土地に運ばれてしまう――。そんな想像しづらい事態が、実際に起きています。
2025年10月、アメリカ東海岸バージニア州のホームセンターにおいて、店で飼っていたメス猫が、配送用トラックに乗り込んだまま別の州に運ばれていたことが判明しました。数週間行方がわからなかったその猫は、約85マイル(約137km)離れた同社の配送センターで発見され、無事に戻ったといいます。
別の例では、長距離トラックに同乗していた猫が、ある休憩所で脱走。その後およそ40日経ってから異なる街で保護され、飼い主と再会したというニュースもあります。旅先でのちょっとした隙間が、猫にとって大きな迷子につながるのです。
加えて、近年では密輸同然の状態で多数の猫が運ばれ、車内に閉じ込められていた衝撃的なケースも報告されています。2025年には、アメリカの貸しトラック(レンタカー)内で134匹の猫が発見され、そのうち多くが衰弱、あるいは死亡していた、なんてショッキングなニュースも。報道によると、空調はもちろん、水や食料もないという劣悪な環境だったといいます。
これらの事例はけっして「特別な状況」ではなく、荷台や荷室が「猫にとって入り込みやすく、そして見つかりにくい場所」であることを示しています。
猫は基本的に暗くて静かな場所、そして人目につきにくい隠れ家を好む生きものです。荷物を運ぶトラックの荷台には、猫が「ひと休みするにはちょうどいい」条件が整っています。それが、猫による“勝手な引越し”の原因になるのです。
加えて、普段から人と暮らす飼い猫が外に出てしまったり、地域で暮らす野良猫が繁殖期にメス猫のニオイをたどって移動していたりします。そんな一瞬の隙で、トラックに乗り込んでしまうことが現実に起きていると言えるでしょう。
迷い猫を見かけたら――まず確認すべきこと
人の意図しないまま、知らない土地へ運ばれてしまった猫にとって、それは「生き抜くか迷子か」を分ける重大な分岐点になります。
もし、そのような迷い猫を見かけたら、まず確認すべきことは以下の4点です。
1、特徴をよく確認する:人に慣れていて首輪がついているなら飼い猫の可能性が高いため、まずは迷子猫情報サイトなどで同じ特徴の猫が投稿されていないかチェックしましょう。トラック移動の可能性もあるため、広範囲で検索するのがおすすめです。
2、近隣の動物病院もチェック:迷子猫の情報が掲示されていたり、マイクロチップのスキャンで飼い主が見つかるケースもあります。
3、警戒している猫は無理せず慎重に:過去に人から怖い思いをさせられた猫は、威嚇したり逃げたりすることもあります。まずは安心できる環境を作りながら、無理せず対応をしましょう。
4、保護→避妊去勢→地域猫として見守る or 飼い主探し:情報が出なければ、保護団体に相談するか、「この猫と暮らす」決断も選択肢として考えられます。いずれにせよ、その猫にとって安全を確保することが大切です。
トラックや配送車の荷台は、猫にとって「思わぬ隠れ家」になり得ます。ですが同時に、それは「知らぬ土地への迷子」という重大なリスクを孕みます。実際、前述したように海外では複数例、「迷い猫の移送」として報告されています。
猫を見かけたら、「たまたま通りかかった野良猫」だけではなく、「トラックで遠くから運ばれてきた迷い猫」という可能性にも思いを巡らせてほしいと筆者(深川にゃんみつ:猫の魅力発信者)は考えます。
そして、もし心当たりがあれば周囲に声をかけたり、迷子猫情報をチェックしたり――そういった小さな行動が、猫の命を守るきっかけになるかもしれません。