齋藤俊輔が過ごした飛躍の2025年「自信がついた」 年内ラストマッチへ…“敵将”樹森監督は「絶対にやらせない」

 2025年のJリーグで最大のサプライズとなったのが、長年“J2の門番”と言われた水戸ホーリーホックのJ2優勝・J1初昇格だろう。資金規模的にJ2平均を大きく下回る地方クラブの大躍進に勇気づけられた人も少なくなかったはずだ。

 そのけん引役となったのが、20歳の成長株・齋藤俊輔だ。今季序盤こそベンチスタートが多かったが、津久井匠海がRB大宮アルディージャへ移籍した6月以降は攻撃陣のキーマンへと飛躍。ベガルタ仙台戦や北海道コンサドーレ札幌戦などで値千金のゴールを奪い、J1昇格の原動力となったのだ。相手3人をドリブルで翻弄して決めた仙台戦のゴールは今季J2最優秀ゴール賞に選ばれたが、水戸の昇格という意味で見れば、札幌戦の一撃の方がより大きな価値があったのではないか。「(札幌戦のゴールは)本当に苦しい中で決められたのが良かった。自分でもよく取れたなという感じです」と本人も話していたが、森直樹監督も貢献度の大きさを高く評価しているという。

 その齋藤が目下、挑んでいるのが『IBARAKI Next Generation Cup2025』。24日はU-22日本代表の一員として、4−3−3の左FWとして先発出場した。序盤から左インサイドハーフに陣取った佐藤龍之介と巧みにポジションを変えながら敵陣に侵入。開始9分には自ら持ち込んで決定的シュートを放ったが、これは惜しくも枠を超えていった。「本当に始動4日目くらいなんで、まだまだですね」と本人も苦笑していたが、シーズン中の齋藤のキレと鋭さがあれば入っていたシーンだった。

 結局、この日は30分間の出場にとどまったが、サウジアラビアで行われるAFC U23アジアカップが開幕する1月7日までにコンディションをトップに引き上げることが、今の齋藤に託される命題と言っていい。27日にはU-21 ALL IBARAKIと今大会の決勝を戦うことになるが、その指揮官は来季から水戸に戻る樹森大介監督だ。ご存じの通り、樹森監督は2024年まで長く水戸で指導に携わっていた人物。今年はアルビレックス新潟の指揮官、栃木SCでコーチを務め、齋藤とは師弟関係にある。加えて来季は再び共闘するだけに、2人が敵として対峙することは興味深いポイントになる。

「齋藤は本当に頼もしくなりましたね。昨年(2024年)は少ない時間で存在感を出すレベルでしたけど、今年はしっかり決め切れる選手になった。最初のポテンシャルの高さは分かってましたけど、それをしっかり結果で示せる選手になったので、本当に嬉しいです」と樹森監督も目を細めている。その上で、「絶対に齋藤と碇(明日麻)にはやらせません」と語気を強めた。そんな樹森監督の話を振られると、齋藤は「キモさんがどんなサッカーをするのか楽しみですね」と不敵な笑みを浮かべた。「本当に吸収することが多かったし、お世話になったので、敵としてしっかり力を示したい」とも強調。1年間の進化を印象付けていく構えだ。

 実際、2025年の齋藤はそれだけの凄まじい経験を積み重ねた。水戸での目覚ましい働きに加え、2月のU-20アジアカップ、9〜10月のU-20ワールドカップに参戦。11月以降は大岩剛監督率いるU-22日本代表にも帯同しており、“次世代のエース格”と位置づけられるようになったのだ。

「今年1年間は水戸に加えて、W杯に行ったりして本当に成長できたと思うし、自分自身、自信がついた。だからこそ、2026年はしっかりとチームを勝たせられる選手になりたい。1月の大会もそうですけど、日本は優勝を狙いに行く立場なので、結果を出したいと思っています」と本人も2026年のさらなる飛躍を誓っていた。

 来月のAFC U23アジアカップでは、一足先にA代表デビューした佐藤龍之介と攻撃陣をけん引していくことになるだろう。「リュウとはやりたいプレーが合うというか、あんまり要求しなくても自ずと息が合う感じはあるので、すごくやりやすい。2人でゴールに行けるならそれがベストですけど、そうじゃなかったとしても相手の脅威になるようなことをやり続けたい。この先、もっともっといい関係を築いていきたいです」と本人も意気込んでいた。

 まさに2人の関係は、A代表の堂安律と久保建英を彷彿させるところがある。彼らが自在に立ち位置を変えながら決定的な仕事をするように、齋藤と佐藤も左サイドで流動的に動いて敵を翻弄する。そういうシーンが数多く見られれば、27日の決勝戦も、1月のAFC U23アジアカップも間違いなく勝てるはず。大岩ジャパンの命運を両看板アタッカーが担っていると言っても過言ではないのだ。2026年の華々しい幕開けになるように、齋藤はここから一気にギアを上げていかなければならない。進境著しい若武者のさらなる進化が本当に楽しみだ。

取材・文=元川悦子

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