H3ロケットによる政府衛星の打ち上げは、来年度に少なくとも5機が予定されている。安全保障や科学探査など衛星の種類も多岐にわたっており、今回の失敗により、日本の宇宙開発利用はさまざまな方面で停滞を強いられる見込みだ。
現在、改訂作業中の政府の宇宙基本計画工程表案では、来年度にH3ロケットの最も低価格な形態の試験機のほか、新型宇宙ステーション補給機(HTV―X)の2号機、宇宙ごみ(デブリ)などを追跡する宇宙領域把握(SDA)や、情報収集など安全保障関連の衛星も予定されている。
中には、火星衛星探査計画(MMX)の探査機のように、打ち上げ時期が限られているものもあり、遅れが生じれば計画全体の見直しを迫られる恐れもある。
H3は2023年3月の初号機で失敗。原因の究明と対策を進め、約1年後に2号機の打ち上げに成功した。この間は先代ロケットのH2Aが並行して運用されていたが、今年6月の50号機を最後に退役しているため、代替となる大型ロケットは現在存在しない。
政府の主力ロケットでは、小型の固体燃料ロケット「イプシロンS」も開発中だが、こちらも地上燃焼試験で2度にわたり爆発事故を起こし、打ち上げのめどが立っていない。当面の間、日本から宇宙へのアクセス手段が失われる状況が続くことになる。