近年、首都圏を中心に新たな車線が増えています。オレンジ線と白線が混在する車線は、踏んでも良いのか悪いのか、弁護士に解説してもらいました。
増えている「法定外表示」の目的は「心理的な働きかけ」
オレンジ線と白線の混在型や、車線内の点線やギザギザ。特にクルマの往来が多い首都圏の幹線道路では、近年、過去に見たことがなかった「謎の車線」を目にするようになりました。
遠い昔に学んだ教習所での道路交通法における「車線」にはなかったものが増えていて、果たして、これを踏んで良いのか悪いのかがイマイチよくわかりません。道路交通法に詳しい、弁護士法人ユア・エースの正木絢生代表弁護士に聞いてみました。
まず筆者が特に「謎」だと思うのは、白線とオレンジ線の“混在型”です。たとえば、「オレンジ・白・オレンジ」の実線がサンドイッチされたものや、白線にオレンジ色の“矢羽根”型の破線が混在した車線を見かけます。正木弁護士はこう解説します。
「近年増えている『法定外表示』というものです。(オレンジ・白・オレンジのサンドイッチ線は)主に事故が多いカーブや通学路などに描かれていることが多く、減速や車間確保を促す『心理的な仕掛け』として採用されています」(正木弁護士)
その意味は「追い越しのための右側部分へのはみ出し禁止」、つまり黄色の実線と同じですが、「特に強調する必要がある場合」に設置されるものとされています。
他方、白線にオレンジ色の矢羽根が組み合わされるのは、「進路変更禁止の注意喚起表示」です。正木弁護士が解説する「法定外表示」の一つとして2021年から導入されたもので、その先に進路変更禁止区間があることを示唆し、事前に余裕をもって進路変更を行えるよう促しています。
これらの車線について、正木弁護士はさらにこう解説します。
「『法定外表示』ですから、表示そのものを踏んだから違反というわけではありません。しかし、『何かしらのリスクが高い区間である』『その先に進路変更禁止区間がある』というメッセージを受け取り、『踏んで良いかどうかわからない』場合は減速するなどし、追い越しを控える判断をするのが、結果的に最も合理的なルールとの付き合い方になると思います」(正木弁護士)
白ともオレンジともわかりにくい車線は、「オレンジ線」と理解すべき?
こういった比較的新しい「法定外表示」のほか、古くから採用されている道路表示の中にも、実は認識が曖昧なものが存在します。こういった車線についても正木弁護士が解説してくれました。
「道路を運転していると、『このセンターライン、白なのかオレンジなのか分かりにくい』『車線の中に細かい点線がたくさん描かれていて、何を示しているのかわかりにくい』と感じることがあります。しかし、道路交通法の法令上の基本ルール自体は、それほど複雑ではありません。
センターラインには『白の実線』『白の破線』『オレンジ(黄色)の実線』がありますが、まず『白の実線』は原則として、その右側にはみ出して通行してはいけません。
一方、『白の破線』は、条件を守ればセンターラインをまたいで追い越して良いことを示しています。
また、『オレンジ(黄色)の実線』は、追い越し目的では、右側部分にはみ出して通行してはいけないという『強い規制』を意味します。
ただし、古い白線の上にオレンジを重ね塗りした結果、白ともオレンジともつかない線に見えることもあります。ですが、オレンジの実線が確認できる区間は黄色実線と同じと理解し、『はみ出して追い越さない』ようにしてください」(正木弁護士)
長年、クルマを運転していると、知らぬうちに道路交通法が改正され新しいルールができていたり、冒頭で紹介した「法定外表示」のような新しい車線などを目にしたりすることがあります。あるいは、かつて学んだつもりでも忘れてしまっていることや、曖昧な解釈のままにしている交通ルールもあることでしょう。
こういった正しく細心の交通ルールを把握するために、正木弁護士は最後にこんな助言もくれました。
「車や自転車の交通ルールは、道路交通法の改正、道路標識・標示の変更・追加、法定外表示等の設置指針の改廃などによりその時々で少しずつ改正されています。ネットの噂や経験則だけに頼らず、警察庁や都道府県警察の公式サイト、免許更新時のテキストなどで、ときどき最新の内容を確認する習慣を持ってください。それが結果的に、思わぬ違反や事故から自分と周囲を守ることにつながります」(正木弁護士)