首都直下地震では、道路の陥没や沿道の建物火災などによる深刻な交通まひが発生し、消防の消火・救助活動に重大な支障が及ぶ恐れが懸念される。建物の耐震化などハード面での対策に加えて、住民らによる初期消火や救助活動などが重要とされる中、コロナ禍以降に浸透した在宅勤務者に対する期待が高まる。
首都直下地震が起きた場合、都心部の交通量を削減して緊急車両の通行路を確保するため、一般車両は環状7号線より内側への通行が禁止される。それでも火災の拡大や道路の損傷、放置車両などにより、1日以上不通になる道路が生じる恐れがある。
今回の被害想定によると、東京都内では最大で死者約8000人、負傷者約5万人、全壊・焼失棟数約17万6000棟に上る。東京消防庁管内のポンプ車は489台、救急車は275台で、同時多発する火災や救助事案への対応は困難を極めるとみられる。
消防団員の数も減少傾向にあることから、報告書は初期消火などを含む防災活動を担う自主防災組織の重要性を指摘した。ただ、東京圏での同組織の活動カバー率は全国より低い78%にとどまる。
そこで、日中の地域の救出・救護活動の担い手として期待されるのが在宅勤務者だ。東京圏で昨年、テレワークをする雇用型就業者は36.8%で、全国平均(24.6%)を上回る。報告書では、国などに「あらかじめ企業などを通じて協力を呼び掛けておく必要がある」と明記された。
東京消防庁は首都直下地震に備え「防災訓練や各種行事、幼少期からの啓発活動などを通じて、防災意識の普及に努め、行動力の向上を図っている」としている。