日銀の追加利上げに連動し、住宅ローンや預金の金利は一段の上昇が見込まれる。債券市場では長期金利も上昇基調を強めており、「金利のある世界」が加速。家計や企業にとっては利払い負担が増す一方、資産形成上のメリットも大きくなり、プラスマイナス両面で影響が広がりそうだ。
金融機関は政策金利の短期金利に応じ、貸出金利の基準の一つである短期プライムレート(短プラ)を決めている。日銀の利上げを受け、三菱UFJ銀行やみずほ銀行は19日、短プラの年2.125%(現行1.875%)への引き上げを発表した。
短プラが上がれば、住宅ローンで約8割の人が選ぶ変動金利も半年ごとの見直し時に引き上げられるのが一般的。毎月の返済額を5年間据え置く激変緩和措置があるケースが多いが、返済額のうち利払い分が増えて元本が減るペースが遅くなり、返済総額は膨らむ。
ただ、日銀の思惑通り、利上げで極端な物価高が抑制され賃上げも進めば、こうしたマイナス面は相殺される可能性もある。
企業向けの貸出金利上昇で物価高や人手不足に苦しむ中小・零細企業は返済や借り入れが困難になる恐れがある。「資金繰りが限界に達する企業が増える可能性が高まっている」(東京商工リサーチ)とも指摘される。
一方、金利上昇にはプラス面もある。三菱UFJ銀や三井住友銀行は同日、普通預金金利を約33年ぶりの水準となる年0.3%(現行0.2%)に引き上げると発表した。また、利上げ継続観測などを背景に長期金利は2%台に上昇。連動して定期預金金利も上がる見通しだ。
貸し出しによる「利ざや」で稼げる環境が復活し、収益源となる預金の重要性は増している。一部金融機関は定期預金金利を大幅に上乗せして顧客取り込みを図るなど、預金獲得競争も激化。生命保険各社は相次いで終身保険の予定利率を引き上げている。資産形成面では家計も「金利のある世界」の恩恵を受けそうだ。