自民党と日本維新の会は19日、2026年度与党税制改正大綱を決定した。高市政権が目指す「強い経済」の実現に向け、成長投資を引き出す「大胆」な設備投資促進税制の導入を盛り込んだ。自民と維新は連立合意で、政策目的のため特例的に税優遇する租税特別措置(租特)の見直しを掲げていたが、租特を新設した形だ。一方で賃上げ促進税制からは大企業を除外した。
新たな設備投資促進税制は、製造機械やソフトウエアなどへの35億円以上の投資が対象。全業種で15%超の利益率を見込む投資計画に対し、法人税額の20%を上限に投資額の7%を控除する。控除を受けず、投資費用の全額を初年度に減価償却費に計上し税金を抑える「即時償却」も選択可能で、投資資金を前倒しで確保できるようにする。減税額は4000億円と見込む。
研究開発税制は新区分を導入。政府が経済安全保障上、重要な「国家戦略技術」に指定する人工知能(AI)や量子、半導体といった先端分野を対象に、研究開発費の40%を控除する。大学など認定研究開発機関との共同研究の場合には、控除率を50%に引き上げる。一方、従来型の研究開発税制は、研究開発費を大きく増やさないと高い控除率を受けられないよう適用基準を厳しくする。
自民、維新が目指した政策効果が薄い租特の廃止では、25年度末で大企業を賃上げ促進税制の対象から除外。人手不足などで賃上げが定着する中、経営体力のある企業には過剰な支援になっているとの指摘があった。中堅企業向けは26年度から適用条件を引き上げた上で、同年度末で廃止。深刻な人手不足で防衛的な賃上げを迫られている中小企業向けは継続する。
租特を巡っては毎年度、個別の税制措置ごとに適用法人数や業種、適用額上位10社の法人コードなどが公表されるが、どれだけの減税を受けたかは分からず、「隠れ補助金」とも呼ばれている。大綱では、来年の税制改正論議で個別企業名の公表について具体化に向けて検討し、結論を得ると明記した。