日系企業に広がる懸念=中国事業見直しも―関係悪化1カ月

 【北京時事】高市早苗首相の台湾有事発言に中国が激しく反発し、日中関係が悪化して1カ月がたった。中国政府が対日圧力を強化する中、日系企業の間では先行きを不安視する向きが増加。中国事業の縮小を模索する動きも出始めている。
 「中国のカントリーリスクはさらに高まった。日系企業の撤退は間違いなく進む」。北京に駐在する日系大手メーカー幹部はこう話した。
 中国外務省の孫衛東次官が11月13日に金杉憲治駐中国大使を呼び出して高市氏の発言に「抗議」して以降、中国側は対日批判のトーンを一段と強めた。翌14日には日本への渡航を控えるよう求める通知を公表。両国を結ぶ航空便の削減や日本関連イベントの中止、日本産水産物の輸入停止などの措置を矢継ぎ早に繰り出した。
 懸念が大きいレアアース(希土類)の対日輸出停止には現時点で踏み切っていないとされるが、「今後、嫌がらせのレベルがさらに上がるかもしれない」(中堅メーカー)と疑心暗鬼も広がる。
 中国は2020年にオーストラリアとの関係が悪化すると、同国産のワインや大麦に高関税を課したほか、同国籍の記者を拘束し、豪州に圧力をかけた。これを踏まえ、「中国への出張を原則として取りやめている」「日本人の駐在員を減らす」といった声も上がる。
 商務省の何亜東報道官は今月4日の記者会見で「中国は海外の投資を歓迎する」と強調した。ただ、大手商社幹部は「アポイントが入らなくなり、ビジネスに支障が出ている」と肩を落とした。
 ある中国政府関係者は「日本の投資は望ましいが、仮に減っても仕方がない」と強気の姿勢を示した。北京の外交筋は「経済規模で日本を大きく上回る中、もはや日本をそれほど重視していない」と分析した。 
〔写真説明〕広州国際モーターショーに出展した日系自動車メーカーのブース前に立つ警備員=11月21日、中国広東省広州市