不当廉売関税、迂回輸出も対象=中国過剰生産に対応、法改正へ

 政府は、反ダンピング(不当廉売)関税の発動対象に、第三国を経由した「迂回(うかい)輸出」を追加する方針だ。過剰生産を続ける中国の「デフレ輸出」を念頭に、国内産業を保護するのが狙い。2026年度税制改正大綱に盛り込み、年明けの通常国会に関税定率法改正案の提出を目指す。
 不当廉売関税は、不当に安い価格で輸出している事実が確認された場合、対象製品に追加関税を課す制度。ただ、発動しても迂回輸出によって追加関税を逃れていると疑われる事例が増加している。例えば、鉄スクラップを溶かして鋼材を生産する電炉の電極として使われる「黒鉛電極」は、中国製を対象に発動された後、第三国で最終加工して日本に輸出されているという。
 背景には、不動産不況の悪化で国内需要が落ち込んだ中国が、余剰生産分を低価格で輸出している問題がある。20カ国・地域(G20)で迂回輸出による「抜け穴」をふさぐ制度がないのは日本とインドネシアの2カ国だけで、産業界が創設を求めていた。
 財務省は欧州連合(EU)の類似制度を参考に防止策を検討。第三国で最終加工するケースのほか、不当廉売関税の発動対象国でわずかな加工を施して品目を変更したり、追加課税されない生産途中の「半製品」を日本で最終加工したりする場合に、同率の関税を課す仕組みを導入する。発動対象国の原材料の価格が完成品価格の60%以上を占めることなどを目安にする。
 迂回防止の調査は、損害の認定に必要なデータの収集期間を通常の不当廉売の調査よりも大幅に短縮し、迅速な対応につなげる。財務省は「こうした制度があること自体が迂回を防ぐ抑止力にもつながる」(担当者)と説明している。