日米豪比で集団防衛条約を=憲法の制約「克服」重要―ラトナー前国防次官補

 【ワシントン時事】バイデン前米政権でインド太平洋安全保障担当の国防次官補を務めたイーライ・ラトナー氏が時事通信のインタビューに応じた。同氏は中国を抑えるため日米豪比の4カ国で「集団防衛条約」を締結し、地域の平和と安定を確保していく必要があると強調。日本については、条約の前提となる集団的自衛権の全面行使容認に向け、憲法問題を「克服」するよう促した。
 ラトナー氏は外交誌「フォーリン・アフェアーズ」に、4カ国による「太平洋防衛条約」の実現を呼び掛ける論文を寄稿。インタビューでは、米国の安保上の最優先事項は中国の侵略の抑止だと指摘した上で、高まる脅威に対処するには米国と友好各国の一層の統合が求められ、既存の2国間同盟を発展させる形で「インド太平洋地域での集団防衛条約の構築を検討すべきだ」と訴えた。
 さらに、米国で対外関与の在り方を見直し、相互主義に基づき同盟国に多くの責任を担わせる必要があるという意見が強まっている現状を踏まえ、「この提案は同盟国により相互的な関係と貢献を求めようという米国の声と一致している」と説明。構想は「実行可能だ」と主張した。
 日本が締約国間の相互防衛義務を定めた集団防衛条約への参加を検討する場合、自衛のため以外の武力行使を禁じた憲法9条が最大の制約になる。ラトナー氏はこれに関し「簡単ではないという点には同意する」と前置きした上で、「難題を克服するのが重要だ。行動を起こさなければ、紛争発生の可能性がはるかに高まるという代価を払うことになる」と警鐘を鳴らした。
 日本の防衛力強化については、防衛費の増額幅だけでなく、米軍との「統合」を視野に所要の能力を見極めなければならないと指摘。また「日韓両国で、短期間で核武装できる能力や自前の核能力の必要性を巡り、真剣な議論が起きている」との認識を示し、米国の長期的関与を確約する集団防衛条約は同盟国の不安を和らげ、核拡散の流れを封じることになると意義を強調した。 
〔写真説明〕インタビューに応じるイーライ・ラトナー前米国防次官補=3日、ワシントン