日本国内では「アルファード」一強の高級ミニバン市場に、とんでもない“黒船”がやってきました。スポーツカー顔負けの加速力を誇る中国製EV、その正体とはいったい何者なのでしょうか。
スポーツカーを超えた? 驚異の加速力
盛況のうちに閉幕した「ジャパンモビリティショー2025」。数ある展示車のなかでも、ひときわ異彩を放つ1台の巨大なミニバンが会場において注目を集めました。
それは、中国のプレミアムEVブランド「ジーカー(ZEEKR)」が放つ、高級ミニバン「009」です。
日本の高級ミニバン市場では、トヨタ「アルファード」およびその姉妹車「ヴェルファイア」が圧倒的なシェアを誇っていますが、ジーカー009は、それらとは全く異なる強烈な個性を持っています。
最大の特徴は、ミニバンらしからぬ動力性能です。全長5m超え、重さ約2.9tという巨体でありながら、停止状態から100km/hまでの加速性能(0-100km/h加速)は、トップスペックでなんと4.5秒を誇ります。
その数値はホンダのスポーツカー「シビックタイプR」よりも速く、トヨタのピュアスポーツカー「GRスープラ」に肉薄するタイムです。
つまり、家族やVIP(要人)を乗せるためのミニバンでありながら、信号待ちからの発進加速ではスポーツカーを置き去りにしかねない性能を兼ね備える、文字通り“爆速ミニバン”と言えるでしょう。
見た目も強烈です。フロント全面を覆う金属調のグリルは、まるで要塞のような威圧感を放っています。内装も豪華絢爛で、広々とした車内には飛行機のファーストクラスのようなシートが並びます。
ただ、「中国車と聞くと品質が心配」と思う人もいるかもしれません。しかし、このクルマには意外な“安心材料”が隠されています。
中身は“ボルボの親戚” その意外なルーツ
実はジーカーというブランドは、中国の自動車大手「ジーリー(吉利控股集団)」の傘下にあります。そして、このグループには、日本でも安全性の高さで広く知られるスウェーデンのボルボも属しています。
つまり、ジーカーとボルボは「親戚」のような関係にあるのです。
実際、クルマの基礎となるプラットフォームは吉利グループ共通の「SEA」を採用しており、ボルボ初のEVミニバン「EM90」とも共通の基盤を持っています。“中国ブランド”という響きから受けるイメージとは裏腹に、その中身は欧州由来の技術で作られているのです。
このジーカー009の日本国内における販売を担うのは、日本のEVベンチャー「フォロフライ」です。納車開始は2026年からの予定で、日本での参考価格は1300万円(税別)とアナウンスされています。
とはいえ、すぐに近所のディーラーで誰でも買えるようになるわけではありません。まずはハイヤー会社やホテルの送迎用といった“法人需要”をメインターゲットに展開していく戦略です。
メンテナンス体制などを確実に整えるため、プロユースから攻める形ですが、街中やホテルのエントランス、繁華街などで、この“爆速ミニバン”を複数見かけるようになる日も、そう遠くないかもしれません。
ジーカー 009は、アル/ヴェルの牙城を崩すことを目的として日本に上陸したわけではなさそうですが、今後どこまでシェアを確保できるのか、来年以降の動向に要注目です。