立民、積極財政で高市首相崩せず=迫る会期末、埋没へ焦り―予算委

 9日の衆院予算委員会では立憲民主党の議員8人が次々と質問に立ち、高市早苗首相が掲げる「責任ある積極財政」について追及した。しかし、首相は「守り」に終始し、立民は首相の答弁を崩せなかった。17日の会期末に向けて他の野党との足並みも乱れており、党内からは焦りも漏れる。
 「財源の6割以上が借金。責任ある(積極財政)と言えるか」。立民のトップバッターとして質問に立ったのは、1カ月前に首相から単年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)黒字化目標を取り下げるとの答弁を引き出した本庄知史政調会長だった。問題視したのは2025年度補正予算案18兆3034億円のうち11兆6960億円を国債発行で賄う政府方針だ。
 首相は当初予算と合わせた国債発行額は昨年度を下回っていると指摘し、「財政の持続可能性にも配慮している」と主張。これに対し、本庄氏は「コロナ禍前に比べれば巨額の国債発行だ。配慮した根拠がどこにあるのか」と畳み掛けた。
 首相は「緊縮財政がふさわしいとは思わない」とはぐらかし、議論はかみ合わなかった。
 立民が「責任ある積極財政」に照準を定めたのは、高市政権は「無責任な放漫財政」だと印象付けるためだ。11日にも予想される補正予算案の採決に向けて対立軸を鮮明にし、公明党との組み替え動議の共同提出につなげる狙いがあった。
 しかし、首相は国会序盤の台湾有事などに関する答弁が波紋を広げたことを意識してか、この日は無難な答弁に徹した。持論だった消費税減税に向けて連携を呼び掛けられたのに対しても「消費税は社会保障財源」などと冷ややかに答弁。質問した山岡達丸氏は「原稿をそのまま読んだのは残念だ」と吐き捨てるように語った。
 会期末までに党首討論の予定はなく、9~11日の予算委は衆院で国政全般に関する論戦を交わす最後の機会になる可能性がある。しかし、立民は日中関係は「敏感すぎる」(幹部)として取り上げず、高市政権に浮上した「政治とカネ」の問題も、上限を超えた企業献金を受け取った首相らの問題を1人が追及しただけだった。
 立民は終盤国会で、衆院議員定数削減法案を巡る野党共闘の構築を目指している。しかし、補正予算案を巡っては、組み替え動議の共同提出を探る公明からすら「立民の考えとは開きがある」との声が漏れる。立民関係者は「戦えていない。このままでは埋没する」と危機感を隠さなかった。 
〔写真説明〕衆院予算委員会で、挙手する高市早苗首相(右)と片山さつき財務相=9日午後、国会内
〔写真説明〕衆院予算委員会で、質問する立憲民主党の本庄知史政調会長=9日午後、国会内
〔写真説明〕衆院予算委員会で、立憲民主党の本庄知史政調会長の質問に答弁する高市早苗首相(右から2人目)=9日午後、国会内