昆虫や植物の写真で親しまれてきた「ジャポニカ学習帳」の表紙が、11月からイラストに刷新された。生物の「共生」をテーマとしたイラストで、「多様な人を尊重する大切さを知ってほしい」との思いが込められている。製造する文具メーカー、ショウワノート(富山県高岡市)の担当者は「子どもたちの『好き』に寄り添う学習帳でありたい」と意気込む。
ジャポニカ学習帳は1970年に発売され、累計販売数は約14億冊に達する。深い緑色の枠で囲まれた昆虫や花の写真の表紙に加え、中のページに当時人気があった「大日本百科事典ジャポニカ(小学館)」と連携した読み物を掲載したことから人気を呼び、現在も学習帳市場でシェア約4割を誇る。
しかし、虫の写真に対し「苦手」「子どもが使いたがらない」といった保護者の声が寄せられたことなどから、昆虫写真の表紙は徐々に減少。2012年以降は、周年企画での復刻版を除き全てが植物になった。
近年はデジタル教科書の登場や少子化により、学校でノートを使う機会が減っている。学習帳存続に向け「思い切ったリニューアル」が迫られる中、「視覚的に親しみやすい」イラストへの変更を決めた。
リニューアルに携わった同社ステーショナリー事業部の岸田愉美さんは「寂しいという声もあったが、『自然を愛する心を育んでほしい』という思いはしっかり引き継がれている」と強調する。
新しい表紙は擬人化された動物や鳥、花、虫などを描いたイラストで、全39種類。イラストにはストーリー性を持たせ、児童の想像力や好奇心を刺激するようにした。裏表紙には、解説と共にイラストの生物の写真も掲載。「興味を持つ入り口として表紙のイラストがあり、裏の解説で子どもの『知りたい』に答える構成」(岸田さん)になっている。表紙の枠も、算数は青、国語は赤など、教科ごとに色分けして使いやすさに配慮した。
岸田さんは「変わらない思いと新しくなったデザインで、いつまでも子どもたちの記憶に残る存在になりたい」と期待を寄せた。
〔写真説明〕リニューアルされ、イラストが表紙となったジャポニカ学習帳=4日、富山市
〔写真説明〕1986年に発売された昆虫が表紙のジャポニカ学習帳(ショウワノート提供)