「ホンダジェット」シリーズはこれまで、「トイレも座席として扱う」運用で定員を定めていました。現在開発が進められている新型機では、どのような運用が取られるのでしょうか。
11人乗りへサイズアップ
アメリカの航空機事業子会社ホンダ・エアクラフト・カンパニー(HACI)では「ホンダジェット」シリーズの新型機「エシュロン」の製造が進んでいます。実は現行機の「エリートII」は8人乗りで、「トイレも座席として扱う」運用で定員を定めていました。では「エシュロン」も同じ手法が取られるのでしょうか。HACIに聞きました。
「エシュロン」は、2021年10月に「ホンダジェット2600コンセプト」として計画が発表された後の2023年に製品化が決まりました。「エシュロン」とは航空機の編隊の一種で効率的な飛行パターンとされる「梯形編隊」などを意味しています。FAA(連邦航空局)の型式認証取得に向けたテスト機は、2025年2月にアメリカのノースカロライナ州グリーンズボロにある工場で製造されているさなかです。
現行の「エリートII」は8人乗りで航続距離は約2865km。ビジネスジェットのクラスとしては最大離陸重量が最も小さな「VLJ(Very Light Jet)」です。一方で「エシュロン」は一回り大きい「LJ(Light Jet)」クラスになります。航続距離はロサンゼルス~ニューヨークをカバーできる約4862kmで、HACIは「アメリカ大陸を無着陸で横断できる世界初のシングルパイロットの小型ジェット機として設計した」としています。
このように「エシュロン」は大型化し長い距離を飛ぶため、現行機のようにトイレを座席として活用する手法は採用しないと筆者は当初思っていました。しかし、HACIにテスト機製造の進み具合を問い合わせた際に尋ねてみたところ、HACIの答えは「最大11人の定員は座席ベルト付トイレも含まれる」でした。
なぜ「トイレ」も定員に?
11人も乗れるようになったのでトイレまで定員に含めなくても……と思うものの、HACIによるとその理由は「型式認証に向けて搭乗可能な乗員数を正確に伝えるため」ということでした。つまり、型式認証を与えるFAA(連邦航空局)へ、燃料や貨物の搭載量に加えて広くなった機内スペースへ、1人でも多く客席数を収容できると示した方が、実際の運航で柔軟性が広がると判断したと推測できます。
出来る限りの性能向上を狙った「エシュロン」ですが、これ以外にも同じLJクラスの競合機より20%、より上の中型クラスの機種より40%以上の燃費向上を狙っています。客室内も静粛性を高くしているとのことです。そして、肝心のテスト機の製造の進み具合については、「主要な(鍵となる)システムや2次構造部材に関して良い経過で進んでいる」とし、計画通りに運んでいると回答にありました。
「エシュロン」の初飛行は2026年に予定され、型式認証の取得は2028年を目標にしています。これまでに発表されたイメージ図を見ると、「エシュロン」は「エリートII」に比べて明らかに胴体が長くなっています。実機はどのようなルックスとなるのか、テスト機の完成が待ち遠しくあります。