有罪が確定した刑事裁判をやり直す再審制度の見直しに向け、法務省の法制審議会(法相の諮問機関)部会で行われている議論を巡り、刑事法学者ら計135人が、再審請求での証拠開示拡充や開始決定に対する検察官の不服申し立て禁止などの必要性を訴える声明を出した。呼び掛け人の新屋達之・元福岡大教授らが2日、東京都内で記者会見して明らかにした。
声明に名を連ねた青山学院大の葛野尋之教授ら再審制度の専門家4人も同日会見し、こうした論点に消極的な意見が多数を占めている部会での議論を批判する意見書を送ったと説明した。
声明は「確定判決の尊重や通常審手続きとの整合性を理由に再審請求人の権利を制約することは、冤罪(えんざい)から目を背けることにほかならない」と指摘。その上で「誤判救済を容易かつ迅速化する再審法改正こそが求められている」と訴えた。
再審専門家4人の意見書も、再審無罪となった袴田巌さん(89)らのケースを挙げ、「現在の制度とその運用は深刻な問題をはらんでいる」と強調。「通常審との整合性を重視して再審の機能強化に消極的な姿勢を取ることは、誤判を発見・是正されないまま残すこととなり、刑事司法が全体としての健全性を失う」と懸念を示した。
部会では同日、12回目の会合が開かれた。委員の鴨志田祐美弁護士によると、会合でこの意見書に触れようとしたところ、配布資料に含まれていないなどとして発言を控えるよう事務局の法務省職員から求められ、議論の対象にならなかったという。
〔写真説明〕再審制度の改正議論を巡り、記者会見で刑事法学者ら135人の声明を紹介する新屋達之・元福岡大教授(中央)ら=2日午前、東京都千代田区
〔写真説明〕再審制度の改正を巡り、法制審議会部会に出した意見書について記者会見する葛野尋之・青山学院大教授(左端)ら=2日午前、東京都千代田区

