今季最終戦「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」は、岩井千怜とのプレーオフの末に鈴木愛が優勝。ツアー通算22勝目を飾った。そのスイングをプロコーチの南秀樹が分析。我々が参考にしたいポイントも教えてもらった。
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予選落ちが続いていた後半戦と比べ、最終戦を迎えたことで、どこか吹っ切れたのか、スイングに振り切りの良さが戻ってきたと感じました。フェアウェイやグリーンが硬く、視覚的にもフェアウェイを狭く見せたコースで勝ち切ったことは素晴らしいと思います。
勝因のひとつにパッティングが挙げられます。今大会のパット数は4日間平均『26.25』、シーズンを通しても1ラウンドあたりの平均パット数は1位、パーオンホールの平均パットは3位と、持ち前のパットの上手さが光っています。
そのパッティングスタイルは独特です。インパクトでヒットしているように見えますが、球を“押す”技術に優れていて、高速グリーンでもラインが出しやすい重いパットが打てるんです。ストロークは肩を使いながら、同時に手も使い、ややフェースを開閉させます。
パットでも手打ちは安定性を欠くので褒められませんが、彼女の場合は体を使う中で手も動くのです。一般的にはボールを体から遠くに置くと、パターのトゥが浮いてヒットしにくくなるものの、前傾をしっかりとって体を動かしていくのでしっかりとインパクトできる。動きを優先した結果のボール位置ということです。ヒザをあまり曲げずに重心がちょうどいいところにあるのも、スムーズに体を使うポイントでしょう。
パッティングストロークを安定させたいなら、その土台作りから取り組みましょう。鈴木プロも「いつまでやるの」と、こちらが呆れるくらい基本の練習を繰り返してきました。そのひとつが両ワキにスティックを挟んでボールを押す練習。
ワキの下10センチ程度のところにアライメントスティックを挟むと、腕だけでストロークできなくなり、肩や体を使う感覚を養えるんです。アドレスでは反り腰にならない程度にお尻の位置を高くして構えます。まずはアドレスの状態からバックスイングせずにそのままフォローを出し、ゆっくりとボールを押してみましょう。通常のボールよりも重い練習用のボールを使うと効果が高まります。この練習ではフォローでフェースにボールが乗った感覚がつかめればオッケー。慣れてきたらバックスイングを上げて第2段階へ入ってください。ボールを押す、重いボールが打てれば、下りのスライスでもラインに乗せやすく、パットに自信が持てるようになると思います。
■鈴木愛
すずき・あい/1994年生まれ、徳島県出身。2013年のプロテストに合格し、14年の「日本女子プロゴルフ選手権大会コニカミノルタ杯」にてメジャー初制覇。当時の大会最年少記録を樹立した。17年、19年に賞金女王を獲得。25年「JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」にて通算22勝目を挙げた。セールスフォース所属。
■解説:南秀樹
プロゴルファーである父の影響でゴルフを始め、高校卒業後にティーチングプロ資格を取得。クラブを使うことを主とする指導法が高い評価を得ている。幼少期から鈴木愛を指導するなど、ツアーで活躍する数多くのプロをサポートしている。(株)ボディスプラウト所属。
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