「谷さんがいなければ…」大岩龍一が涙の初V 恩師と築いた“ベース”とは

<カシオワールドオープン 最終日◇30日◇Kochi黒潮カントリークラブ(高知県)◇7375ヤード・パー72>

首位と2打差の3位タイで最終日を迎えた27歳の大岩龍一が、ボギーなしの7バーディを奪い「65」をマーク。トータル21アンダーで砂川公佑と並び、勝負はプレーオフにもつれ込んだ。2ホール目で大岩がバーディを奪い、今季11人目となるツアー初優勝を遂げた。プレー終了後、涙を流す大岩に片岡尚之ら多くの仲間が駆け寄り、祝福のウォーターシャワーを浴びた。
「レギュラーツアーが今季で5シーズン目になるんですけど、3年目にシード落とし、去年に復帰して、今シーズンはかなりいい調子を維持できていたので、やっと勝てたなという感じでした」と安堵の表情を見せた。

千葉県出身。堀越高校から日本大学に進学し、2年生のときに中退。2018年にプロ転向を果たし、翌19年はアジアの下部ツアーに挑戦し「Combiphar Players Championship」で優勝している。

同年は国内下部ツアーで賞金ランク20位に入り、翌シーズン(20‐21年の統合シーズン)にレギュラーツアーへ参戦。21年にはトップ10入り7回、賞金ランク23位で初シードを獲得した。23年はアジアンツアー転戦中に右ひざを痛めたことや新しい取り組みなどの影響でシードを失ったが、QT11位で臨んだ24年は賞金ランク49位で復活。そして今年、ついに勝利をつかんだ。

プロ8年目でつかんだ初の栄冠。その姿に涙を流したのは、コーチの谷将貴氏だった。「真面目で素直で、1打でも上手くなるためだったら、『これをやったほうがいいですね、あれやったほうがいいですね』って、率先して自分から言ってきて、私が言ったことに対して、素直に受け入れてくれて。一から育ててきて優勝できたことは本当にうれしいです」。目頭を押さえながら笑顔を見せた。

師事したのは高校1年の頃から。谷氏は「3年から5年かけてベースを作り、35歳から45歳までの10年間でどれだけ成功できるか」を見据え、目先の結果ではなく“長く戦える選手”を育てることを念頭に、ハーフスイングなどの基礎から徹底的に取り組ませた。「一つ一つ信じてきてくれたのが、本当にうれしいです」。

大岩は習い始めの1~2年間は30~40ヤードを打つスイングを集中的に取り組み、さらに半年間コースに行くのも禁止、鳥カゴのような小さい練習場で鏡を見ながらひたすら素振りだけをするような練習が続いたという。そして、腕が地面と平行になるほどのコンパクトなトップから放たれる強烈なショットが誕生。その背景には、こんな“裏話”があった。

「元々はバックスイングで(シャフトが)地面と平行になるまで上がっていた。ハーフショットやスリークォーターショットをやっているときに『これが将来のフルショットのトップの位置になるから』って言われて、最初は“何言っているんだろう”と思ったんです。ショートトップで、体の前からクラブが外れにくいような動きが曲がりにくいスイングになることが“長生き”する秘訣なんじゃないかなって谷さんは昔から考えていたんです」(大岩)

現在、ドライバーの安定性を示すスタッツ「トータルドライビング」ではツアー4位。谷氏の狙い通り、飛んで曲がらないショット力を身につけている。「スイングに困らないようなベース作りを高校、大学、プロになるまで5年間くらいかけてずっと教えてくれた。谷さんがいなければ、いまのゴルフはなかったと思うし、逆に言えば僕の持っている技術のほとんどは谷さんから教わったことなので、本当に感謝しています」と話した。

さらに、2022年シーズンまでドローボール一辺倒だったが、プロ1年目に日本開催の米ツアー「ZOZOチャンピオンシップ」で海外選手の球筋を目の当たりにし、「もっと先のステージに行くならフェードボールは必要になる」と感じ、23年からは逆球にも挑戦した。

「それが次の年(23年)のシード落ちに若干関係していて、若干回り道もありましたが、今まで全く打てなかったのを打てるようにしてくれた。難しかったんですけど、それは1つ乗り越えたかなと思う」。苦しい時期もあったが、その取り組みが翌年のシード返り咲きにつながったのだ。

なかなか勝てない時間が続き、最大の目標でもある米ツアーへの道が遠のいたと感じることもあった。「(米ツアーに)行ってみたいですけど、僕は日本で全然勝てない選手だなと、最近は思って“アメリカとか何言っているんだろうな俺…”って、この数年思っていた。でも、もっと次のステージに行きたい思いは、今もまだあるので、きょうはたまたま勝ちましたけど、挑戦してみたい気持ちはあります」。悲願の初Vは、大岩の夢に向けた大きな一歩となっただろう。(文・高木彩音)

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