<JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ 最終日◇30日◇宮崎カントリークラブ(宮崎県)◇6543ヤード・パー72>
プロ13年目で10度目のプレーオフを2ホール目で制した鈴木愛が9年ぶりのメジャー制覇を果たした。ツアー屈指の難しさを誇る宮崎CCでも最難関ホールの最終18番パー4での、岩井千怜との最終決戦。元賞金女王はパーを取ることしか考えていなかった。
「私にバーディは多分ないと思った。あのホールはバーディを狙いにいけるホールではないので、いかに根気強くパーを取るかだった。岩井さんはアグレッシブにバーディを狙ってくるだろうと思ったけど、バーディを取られたらしょうがない。こっちはパーを狙って、勝てたらラッキーという気持ちでした」
12年連続12度目の出場のシーズン最終戦。4日間の平均スコアが『4.3938』で今年も最難関ホールとなった18番に、いいイメージはない。左ドッグレッグで2打目は打ち上げの最終ホール。今大会も初日にボギーを打ち、1打リードで迎えた最終日も2打目をグリーン右バンカーに入れて、スコアを落とし、先にホールアウトしていた千怜にトータル9アンダーで並ばれた。初出場の2014年から計48度プレーした18番の平均スコアは『4.29』。バーディはわずか4個で、ボギーは14個、ダブルボギーも2度ある。パー狙いは勝つための攻めの一手だった。
「この1年は本当に長く感じた。最後は『やっと終わった』という気持ちが最初で、その次に『優勝できてよかったな』と思いました」
プレーオフは2ホール目に千怜がボギーを打ち、80センチのパーパットを沈めて勝敗が決した。狙い通りのパーセーブで手にした2016年「日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯」以来のメジャー3勝目。9月の「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」から、予選落ちのない日米共催「TOTOジャパンクラシック」を除いて、2週前の「伊藤園レディス」まで自己ワーストを3試合も更新する6試合連続の予選落ち。「ゴルフがイヤになった。体はどこも悪くないのに、ショットは左に左に曲がる。パットもダメ。気持ちを上げていくのが難しかった」。ゴルフ人生最大の不調にベテランはもがき苦しんでいたが、マスターズGCのときに左に曲がるのを嫌がり、右に向きすぎてアドレスしていることに気が付いた。「気持ちが悪いけど、頑張って左を向いてみよう」。そこからボールは真っすぐ飛ぶようになり、トンネルの出口が見えてきた。
プレーオフを戦った岩井千怜と姉の明愛、昨季年間女王の竹田麗央、22年から2年連続女王の山下美夢有の4人が今季から米ツアーに主戦場を移した。今大会には岩井姉妹、畑岡奈紗、古江彩佳、勝みなみ、吉田優利の米ツアー組が出場し、”日米対決”の様相を呈した。そのなかで手にしたツアー通算22勝目。「ホント、今年活躍している選手ばかり。日本ツアーの意地を見せたいとかいうレベルに今、自分はいないので、順位が下がってしまうなぁと思っていた。自分は一番になるなんて予想もしていなかった」と笑い、「すごく自信になった」と大きくうなずいた。
究極の目標に掲げる永久シードの通算30勝まで、あと8勝となった。来年5月に32歳となる。「35歳までに30勝したい。35歳を超えると先輩方を見ていても、なかなか優勝するのが難しくなる。1年2勝ずつでぎりぎり届く計算。そういう意味でも、この1勝は本当に大きかった」。
メンタル、飛距離、技術を最大限に生かせるのは35歳までと考えている。平成生まれでは初となる永久シードへの挑戦。自分に課したリミットまで4年しかないのか、4年もあるのか。米ツアー勢を撃破しての完全復活。ツアー史上16人目となるメジャー3勝目をつかんだベテランの答えは、間違いなく後者だ。(文・臼杵孝志)